“世界の歌姫”テイラー・スウィフト、35歳の誕生日 “歴代最高興収”ツアー閉幕…コンサートフィルムも話題に
テイラー・スウィフトの大規模ツアー「THE ERAS TOUR」が12月9日(現地時間)、カナダ・バンクーバーで閉幕した。テイラーにとって“これまでの音楽のすべての時代(THE ERAS)を巡る旅”として世界中を回った同ツアーは2023年3月にスタートし、2024年2月には日本でも行われ、東京ドームで4日間にわたってファンを楽しませた。合計149公演、毎公演45曲以上を披露し、3時間超。ステージ演出、衣装、照明など全てにこだわり、それぞれの公演が違うものとして魅せて、リピーターも含めて、毎回満足度の高いものになった。チケット売り上げ総額は20億7761万8725ドルで歴代最高を記録。販売されたチケットの枚数は1016万8008枚、コンサートフィルム「テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR」の世界興行収入は2億6100万ドルに及んだ。まさに“世界の歌姫”として歴代最高のツアーを成功させたテイラーが、12月13日に35歳の誕生日を迎えた。そこで、あらためてテイラーのこれまでのキャリアを振り返ってみよう。 【動画】圧巻のパフォーマンス…!巨大スタジアムの大観衆を魅了するテイラー・スウィフト ■“カントリーミュージック”の聖地でスカウト 『1989』というタイトルのアルバムがあるように、テイラーは1989年12月13日、米国ペンシルベニア州ウェスト・レディングで生まれた。幼い頃にミュージカルに興味を持ち、ブロードウェーでも歌や演技のレッスンを受けたという。人気カントリー歌手のパッツィー・クラインやシャナイア・トゥエインの歌を聴いたのをきっかけにカントリーミュージックに興味を持つように。ポップスやロックをはじめ、いろんな音楽の要素を取り入れた楽曲で世界中の音楽ファンを魅了しているテイラーだが、ミュージシャンとしてのスタートは“カントリー”だった。12歳の時にギターを弾き始め、初めて作曲も行った。14歳の時に父親の仕事の都合でテネシー州ナッシュビルに引っ越した。 ナッシュビルといえば、カントリーミュージックの聖地とも呼ばれる場所で、ナッシュビルのクラブで歌っている時にスカウトされ、2006年に16歳でデビューを果たした。2006年に発売した最初のアルバム『テイラー・スウィフト』、2008年の『フィアレス』はカントリー色が強い作品で、『フィアレス』で第52回グラミー賞の主要部門の一つ「最優秀アルバム賞」を史上最年少(20歳)で受賞した。2010年の3rdアルバム『スピーク・ナウ』もカントリーが主体ではあるが、エレキギターを多用したポップ的要素も多く見られ、変化が感じられるアルバムとなった。 そして大きく化けたのが2012年にリリースしたアルバム『レッド』だった。大失恋から引き起こされた赤い感情がタイトルの由来になっているが、音楽的なジャンルは一気に広がり、先行シングルとして発表された「We Are Never Ever Getting Back Together(私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない)」はビルボードHot100において自身初の1位を獲得した。日本でも、この曲が恋愛リアリティーショー「テラスハウス」の主題歌に起用されたこともあり、テイラーの人気が爆発。 続く『1989』(2014年)はテイラーにとって初の「公式なポップアルバム」となり、サウンド的にさらに大きく変貌していった。その変化はいい方向に向かい、第58回グラミー賞で「フィアレス」に続いて2度目の「最優秀アルバム賞」を受賞。2017年のアルバムは“名声”や“評判”といった意味の「レピュテーション」がタイトルとなっており、世界的なトップスターになるとやっかみや反発も大きくなり、一時期、それに苦しめられたこともあったようだ。とはいえ、楽曲はやはり素晴らしいものばかりで、テイラーの魅力が凝縮された作品になっている。 ■コロナ禍に2枚のアルバムをリリースして世界に勇気を与えた 2019年に『ラヴァー』を、2020年には『フォークロア』『エヴァーモア』の2枚のアルバムを発売。『フォークロア』はテイラーの作品の中で最もパーソナルな内容となっており、発売の数時間前に発売が発表されるというサプライズで世界を驚かせた。『エヴァーモア』は『フォークロア』からわずか5カ月後のリリースで、こちらも数時間前に発売を発表するというサプライズがあった。この2枚は“姉妹盤”という位置付けになっている。2020年といえば、コロナ禍で世界中が重々しい空気に包まれていた。そんな中、サプライズも含め、2枚のアルバムを出してくれたことで救われた人もたくさんいたはず。 2022年に『ミッドナイツ』、2024年に『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』と、コンスタントにリリースを続けているテイラーは、世界のエンターテインメント界のトップを走り続ける存在である。『ミッドナイツ』もグラミー賞の「年間最優秀アルバム賞」を受賞しており、『フィアレス』『1989』『フォークロア』に続いて4度目の受賞となった。 2021年から再録プロジェクトを行なっており、2021年に『フィアレス』と『レッド』、2023年に『スピーク・ナウ』『1989』の“Taylor’s Version”をリリース。これは2019年に自身の楽曲の権利が売却されたことを受けて、”自分の作品を取り戻すため“に「Taylor’s Version」として再録し、発売した。 「THE ERAS TOUR」を終え、そして35歳の誕生日を迎えたテイラー。記録的ヒットとなったコンサートフィルム「テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR」の劇場版未公開の曲やアコースティック・コレクションを収録した「Taylor Swift | The Eras Tour(Taylor's Version)」も2024年3月にディズニープラスで配信され、話題を集めたのも記憶に新しいところ。 アメリカ・ロサンゼルスのSoFiスタジアムで収録された同フィルムは、コンサート規模で約7万人が収容できるという大会場で行われたショーを、劇場版で未収録だった楽曲「カーディガン」、毎公演で変わるサプライズ・ソング・コーナーでテイラーが披露したアコースティック・ソングの4曲の計5曲のパフォーマンスが追加され、コンサート映像が初めて全編収録(約3時間半)された。どこでライブを行ってもプラチナチケットなので、なかなか現場には行けないと思うが、配信ならではのどこでも見られる良さに加え、美しい映像で臨場感もたっぷり。楽しさと興奮は真っすぐ伝わるものになっていた。 テイラーはこれから1年間活動休止をするとも言われているが、しっかり静養してもらって、完全復活後どんな新しいチャレンジを見せてくれるのか楽しみだ。 ◆文=田中隆信