年収だけで「家の購入額」を決めるのは危険…必ず知っておくべき〈住宅ローン〉で”無理なく完済できる”月々の支払額、“やってはいけない”返済方法
ボーナスは「貯蓄」しても「支払うな」!
住宅ローンは若いときから返済を開始すれば、それだけ早く完済できます。 しかし、若いときには頭金を用意できなかったり、収入が低いためシミュレーションをしたときに自分の欲しい家が買えなかったりなど、長期のローンを組むには決断が難しい側面があります。また、自分の支払い能力よりも高い家を購入した人も、考えるのは「ボーナス払いで返済すればいい」ということだと思います。 しかし、ボーナス払いを念頭に置いた住宅ローンを組むことほど危険なことはありません。企業の規模にかかわらず、会社の経営状態が悪くなれば、経営者は従業員のボーナスを削減します。出向、転籍、転職などによってボーナスの支給額も変わってくるでしょう。しかも、ボーナス払いは35年間で合計420回の支払いに加え、夏と冬の1年に2回の合計70回の支払いが加わることになります。合計490回も支払うことになるということは、難易度が上がるのです。 いちばん安全なローン返済の考え方は、収入に変動があっても、返済は一定にすることと、最も収入の少ない月に合わせて住宅ローンの返済額を決めることです。一度決めた住宅ローンの条件は、最後まで変わりません。 イレギュラーな出来事やアクシデント、リスクに強い資金計画を立てることが必要だと思えば、どれだけボーナス払いが危険なことかは明白でしょう。
退職金での完済は老後破産につながる
家の購入時、自分の残りの勤務期間が35年もないのに、ローンを組む最長期間の35年のシミュレーションで計算されてしまうことは、よくあることです。それは、毎月の住宅ローン返済額の負担が少なく見えるため、買主の心理的ハードルが下がるうえ、金融機関の審査に通りやすくなるためです。 「60歳または65歳で定年したときに住宅ローンの残高がいくらになるか」は必ず把握しておくべきだというお話は前述の通りです。その金額を定年時までに繰り上げ返済しないと、収入が安定している現役時代に住宅ローンが終わりません。 そこで、「親が退職金でローンを完済したから、自分も退職金で払えばいい」と思う人もいるかと思いますが、それも非常に危険な考え方です。 親世代は景気も良く、定年までひとつの企業で働き続ければ、老後の生活は保障されていました。多くの企業が退職金をきちんと支払い、老後の年金も潤沢に支払われていました。しかし、景気は悪くなり、企業に余力はなくなっているうえ、少子高齢化は進み、今後、年金の支給額が上がることはないでしょう。 親と同じようなマネープランを考えているようなら、今すぐに考えを改めましょう。退職金は住宅ローン返済額として考えず、老後資金に充てるようにすることがベターです。 千日 太郎 オフィス千日(同)代表社員 公認会計士
千日 太郎
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