「東大には地方出身の女子が異様に少ない?」 現役東大生が調査でその理由を解き明かす!
ただ、それも影響してか、リベラルアーツが特色である東大内ですら、ジェンダーについての柔軟な議論ができないこともしばしばあって、「三島由紀夫は男のほうが女よりも知性において勝っていると言っていたので男女比8:2は順当」と話す男子学生もいるほど。 大学は学生にとって社会に出る前に認識のすり合わせを行なう最後の砦として機能するべきだと思います。そういう意味でも、女子学生を増やさないと、ジェンダー観が変わらないまま社会に出て、偏ったままの世界を再生産することにつながってしまいます。 ――では、難関大における女子比率の改善に向けて具体的な方策は何がありますか? 川崎 鍵のひとつは寮だと思います。例えば、現在ある県人寮は男子寮ばかりで、女子が入れる寮の数が極端に少ない。いくつかの県人寮に電話取材したのですが「地方から出てくる女子は家が裕福だから(寮は必要はない)」と話す寮までありました。 寮は金銭面と安全面の両方のハードルが下げられるので、県人寮や大学寮を整備するのはひとつの手だと考えています。 取材をした中で忘れられないのが九州出身の女の子のこと。その子の親は兄や弟には教育投資を惜しまないのに、その子は塾に行かせてもらえず、お金のかかる県外への進学や浪人も禁止されていたそうです。 そんな中、親に無断で県外の大学を受験して進学したら、約束を破ったということで学費も生活費も出してもらえず、自身がアルバイトでためたお金も兄の学費に使われていたそう。「そんな家が今の時代にあるのか」と衝撃で泣きそうでした。 地方の女子生徒が置かれている状況の一例ですが、そんな古いジェンダーステレオタイプがいまだ残る地方でこそ選択肢が広がってほしいと思っています。 ■(右)江森百花(えもり・ももか) 2000年生まれ、静岡県出身。静岡県立静岡高校から1年の浪人を経て東京大学に進学。文学部人文学科社会心理学専修課程在籍。2024年、Forbes JAPAN「世界を救う希望」100人に選出 ■(左)川崎莉音(かわさき・りおん) 2001年生まれ、兵庫県出身。小林聖心女子学院高校から東京大学法学部に進学。法と社会と人権ゼミ第30代学生代表幹事。2024年、Forbes JAPAN「世界を救う希望」100人に選出 ■『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』光文社新書 946円(税込) 首都圏以外に暮らす女子高生は偏差値の高い大学への進学にメリットを感じにくい傾向にある。東京大学を拠点とした学生団体#YourChoiceProjectがそのような調査結果を2023年5月に公表し、大きな話題を呼んだ。調査で判明したのは、地方で暮らす女子高生の資格重視傾向、自己評価の低さ、そして浪人を避ける安全志向が強いことだった。データはもちろん、実際の声を集めたインタビュー、そして解決のための方策まで踏み込む一冊 取材・文/新海渚沙 撮影/佐々木里菜