北朝鮮との衝突口実に戒厳狙ったか…元情報司令官の手帳に「NLLで攻撃誘導」
内乱勢力、「北風工作」まで企図か ノ・サンウォン、3月と11月の西海での大規模訓練に注目 情報司令官と777司令官を務め、北朝鮮の動向を熟知
ノ・サンウォン元情報司令官の手帳に記されていた「NLL(北方限界線)で北朝鮮の攻撃を誘導」という表現は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が北朝鮮との軍事衝突を誘導し、それを口実として非常戒厳を宣布しようとしていたという「北風工作」の可能性をいっそう濃くする。ノ元司令官は12・3内乱の陰の企画者とされているのだから、なおさらだ。ノ元司令官の手帳は、12・3内乱を捜査中の警察庁国家捜査本部非常戒厳特別捜査団(特捜団)が同氏の京畿道安山市(アンサンシ)の自宅で確保したものだ。手帳には「汚物風船」という表現も記されているという。 ノ元司令官の手帳に記されていた「NLLで北朝鮮の攻撃を誘導」という表現が見過ごせないのは、ノ元司令官がかつて情報司令官と777司令官を務めていたからだ。軍当局は、北朝鮮の諜報に関する日日情報報告書を出しているが、同報告書の作成を主導しているのは情報司令部と北朝鮮の通信を傍受する部隊である777司令部だ。両部隊は毎日、黄海道沿岸の北朝鮮の海岸砲の砲門開放の有無、NLL付近の北朝鮮の海軍艦艇の動きや北朝鮮軍の通信内容などを精密に監視している。 ノ元司令官は情報司令官や777司令官を務めていた際に、NLL付近の北朝鮮軍の動きを手に取るように把握していたため、その気になれば「NLLで北朝鮮の攻撃を誘導」する方法も簡単に見つけられたとみられる。例えば、海軍艦艇をNLLに近接配置したり、白ニョン島(ペンニョンド)、延坪島(ヨンピョンド)の海兵隊が海上射撃訓練をする際にNLLに近い海域に砲弾を撃たせたりすれば、北朝鮮の攻撃を誘導することができる。今年、延坪島、白ニョン島での海上射撃は4回(1、6、9、11月)行われている。 2010年11月の延坪島砲撃戦も、延坪島の海兵隊によるK9自走砲の海上射撃を北朝鮮が領海挑発と見なして攻撃してきたことで起きた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は今年1月、「無法な『NLL』をはじめとするいかなる境界線も許されない」と主張しており、NLLを海上における南北の境界線として認めていない。 これに対して、韓国と米国の国防相は昨年10月30日(現地時間)、米ワシントンの国防総省で行われた第56回韓米安保協議会議(SCM)後に発表した共同声明で、「北朝鮮にNLLを尊重するよう求めた」と述べている。韓米がNLLを共同で強調したのは2018年以来6年ぶり。 西北島しょ防衛司令部が今年3月と11月に、延坪島や白ニョン島などに対する北朝鮮軍の攻撃と奇襲占領に備えた西北島しょ増員訓練、防衛訓練をおこなったことも注目に値する。これらの訓練は、陸海空軍や海兵隊の戦力が大規模に参加し、実戦のような行動化訓練を中心として行われた。北朝鮮軍が対応に出てくる可能性もある状況だった。 ノ元司令官が「北風工作」を企画したとすると、北朝鮮の攻撃を西海(ソヘ)NLLで誘導するのが相対的に負担の軽い選択だ。平壌(ピョンヤン)への無人機浸透、北朝鮮のごみ風船の出発地点に対する攻撃によって軍事衝突が起きると、ソウルを含む首都圏が大きな被害を受け、まかり間違えば全面戦争へと拡大する危険性が高いからだ。 共に民主党は先に、北朝鮮の挑発を誘導して非常戒厳を宣布するために、キム・ヨンヒョン前国防部長官の指示で10月に平壌に無人機を向かわせた可能性があり、先月キム前長官が北朝鮮との局地戦を誘導するために北朝鮮がごみ風船を飛ばす場所を原点打撃するよう合同参謀本部に指示していた、との疑惑も提起している。ただし汚物風船の出発地点に対する攻撃は、当局者の強い反対で実行されなかった、というのが合同参謀本部の説明だ。 クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )