湘南の18歳逸材・鈴木冬一が久保建英のいないU-20W杯代表の秘密兵器だ!
先輩選手たちの手洗い祝福を受けながら、湘南ベルマーレの高卒ルーキー、18歳のMF鈴木冬一(長崎総合科学大附属高卒)は胸中に秘めていた誓いを思い出した。 「初ゴールを決めたら、真っ先に監督のところへ行こう」 歓喜の輪から抜け出したヒーローが、ベンチ前で喜びを爆発させている曹貴裁(チョウ・キジェ)監督(50)の胸へ笑顔で飛び込んでいく。FIFA・U-20ワールドカップに臨むU-20日本代表に抜擢されてから一夜明けて、公式戦通算13試合目で決めた待望のプロ初ゴールで自らを祝福した。 ホームのShonan BMWスタジアム平塚にV・ファーレン長崎を迎えた、YBCルヴァンカップ予選リーグ第5節。両チームともに無得点で迎えた後半3分に、待ち焦がれた瞬間が訪れた。 左タッチライン際でパスを受けたFW山口和樹(23)が、相手の最終ラインの裏へ抜け出したMF中川寛斗(24)へ縦パスを通す。鈴木はこのとき、主戦場の左ウイングバックの位置からゴール正面、ペナルティーエリアのすぐ外側へスルスルと移動していった。 「どんなポジションを任されても、相手ゴール前へ果敢に入っていって、ゴールを狙う意識を強くもっていたので。ただ、その後にどのようにしてシュートを決めたのか、特にシュートを打った瞬間をまったく覚えていないんですよ」 無我夢中だったからこそ、記憶が飛んでいるのだろう。中川からの横パスを右足でトラップし、いっさいの無駄がない、流れるようなモーションから利き足の左足を振り抜く。アウトサイドにかかった強烈な一撃は弧を描き、目の前にいた相手選手をかわしながらゴール右隅に突き刺さった。 攻撃陣のダブルエース、久保建英(FC東京)と安部裕葵(鹿島アントラーズ)が選外となったU-20日本代表において、秘密兵器となりうる存在だ。開幕から約2ヵ月半。ルーキーながら公式戦の舞台で850分間以上もプレーしてきた過程で、ポテンシャルを急速に開放させてきた。 3月下旬に行われたU-20日本代表のヨーロッパ遠征で、出発直前に追加で初招集された。遠征において一発回答で影山雅永監督(51)に強烈なインパクトを与え、自らの居場所をもぎ取った形だが、実はベルマーレを率いる曹監督もすでに2度、鈴木から衝撃を受けている。 「あんな18歳は、なかなか見たことがないよ」