ラッパー#KTちゃんが語る、新曲で描いた20歳の現在地、D.Oからの言葉
「バトルからの卒業」の理由
ー3月28日のイベント「NEO GENESIS vol.3」でバトルからの卒業を宣言され、6月15日の「戦極MCBATTLE 第34章」でバトルを卒業されました。なぜ「卒業」する必要があったんでしょうか。バトルに出るか出ないかを、曖昧にしておくこともできたと思うんですが。 私は「高校生RAP選手権」をきっかけに色んな方に知って頂いたし、そこからいろんなバトルに出場することで、広がりが増えていったんですね。だから、フリースタイル/MCバトルの中で得たものは本当に大きいし、感謝の気持ちも強くて。だけど、今は自分が”瞬間のラップや言葉”じゃなくて、思いや感情を丁寧に汲み上げたり、ぎゅっと詰め込んだ、時間のかけたものを作りたくて。そして、その音楽を聴いた人がエネルギーを受け取ってくれたり、勇気を貰えたと感じてくれる作品が作りたい。そういう表現をしたいから、フリースタイルラップの卒業宣言をして、けじめを付けたかったんですよね。だから卒業宣言は「#KTちゃんは新しいフェーズで頑張ります」という決意表明ですね。前向きに進んでいくための決意を言葉にしたかった。 ーDOTAMAや呂布カルマのように、アーティスト活動とバトルを並行させる人も近くにいたと思いますが。 私の場合は、フリースタイルとアーティスト活動を並行させると、エネルギーが分散しちゃうんですよね。アーティストとして上に行くには、並大抵じゃないエネルギーが必要だし、いまは楽曲を作ることに全部の力を注入しなくちゃなって。 ーフリースタイルの言葉と、書き溜めたものでは感触が違う? どちらも”魂を込めている"という意味では一緒です。この先何年もずっと残り続けるような歌詞を書きたいし、自分の言葉だったり、私なりの表現、言い回し、ワードチョイスみたいな部分は、時間をかけて書かないと難しいなって。 ー“バトルで活躍する#KTちゃん”というバリューを無くすことは怖くないですか? だからこそ絶対にそのイメージを、過去の自分を絶対に超えないといけないと思いますね。フリースタイルで立った両国国技館に、ソロとして立たないといけないと思うし、アーティストとして両国のステージに立って、そこにみんなが見に来てくれたら、アーティストとしての自分が過去の自分に勝てた瞬間だと思うから、そこに向けて走りたいという気持ちです。 ーそしてライブでは新曲となる「imagination」が披露されました。 あの曲で『しっくり来た感じがあったので、ライブの最後で披露しました。書けたのは今までの試行錯誤や挑戦という軌跡があったからだと思うし、その先で見えた光景が「imagination」だったんですよね。フリースタイルで二年間活動して、「戦極」でそれを卒業して、これからアーティスト活動に専念しようと思った時に書いたリリックでもあって。走り続けた経験を振り返った時に、「なりたい自分の姿を明確に、具体的に想像すれば、そしてより鮮明に思い描けば描くほど、自分はそのイメージが現実になっていった」という手応えがあったんですよね。毎回ぶつかりながら、いろいろなものに立ち向かう中で、自分の想像こそが、夢を叶える鍵になるんだなっていう感覚を得たし、その感覚は今後のアーティスト活動につなげていきたいし、歌詞にしておきたいなって。 ー「戦極」後に書いたんですね。DOTAMAや崇勲、KOPERUなどのバトル強者が32人参加したそのバトルで、#KTちゃんはベスト4に進みました。 過去最高記録でした。どのバトルも本気で勝つつもりではいたんですが、あの「戦極」は最後だと決めてたから、絶対に勝ちたい、悔いを残したくないと思ってたんですよね。それで1回戦から決勝までをイメージして、 賞金を貰って「イェイ」ってやるところまで完璧に想像して出たんですよ(笑)。 ー賞金のパネルを持って客席をバックに記念撮影するところまで(笑)。 そうそう(笑)。それぐらいありありと明確に自分の姿を想像してたんですよね。結局、優勝はできなかったけど、悔いのない、全てをさらけだした、自分の思いを全部出したバトルができたし、その充実感がすごくあって、そこで「夢はこういう風に叶えるんだ」と改めて思えたんですよね。だから自分で目標を設定して、そのゴールに到達する為には何が必要なのかを明確に想像できるようになったし、その思いを形にしていったのが「imagination」でした。本当に歌詞にある通り「今ならできるわ」と思ったんですよ。 ー「今ならできるわ 羽ばたくイメージ」という一節ですね。 私のスタイルを肯定してくれる人もいたけど、「あれはヒップホップじゃねえ」みたいなアンチの声も少なくはなくて。でも、それに対してあえて言葉では反論しないで、自分のスタイルを貫いてきたんですよね。だけど本当に最後のバトルだけは、全部の感情を吐き出したんですよ。アーティストとして進んでいくためには、ここで全てをさらけ出さないといけないと思ったし、「そんな生半可な気持ちでここ立ってんじゃねえんだよ!」みたいな(笑)。そういう自分自身のリアルな言葉を最後の最後に出せた時に、「あ、私このままいけるわ、うん、やってやるわ!」って気持ちがパッと浮かんできて。その感情を歌詞にまとめるときにも、ここで改めて私はここからアーティストとして進んで行くぞっていう目印を自分で作れたと思いますね。 ー#KTちゃんは想像や願望をそこまで強く形にしてこなかったですよね。 確かにそうですね。あまり意識してなかったんだと思うし、1年前の自分では絶対に書けなかった。だけど、色んな経験を経て、今の自分だからこそ書ける曲だとも思っていて」