横浜ゴムと筑波大学ら、ゴム材料の電子顕微鏡画像を明瞭化する新たな画像処理手法を開発
筑波大学、横浜ゴム、科学技術振興機構(JST)は11月20日、ゴム材料の内部におけるナノスケール構造を鮮明に可視化する、新たな画像処理手法を開発したと発表した。 同研究は、JSTの戦略的創造研究推進事業 CREST 課題名「反応リマスターによるエコ材料開発のフロンティア共創(JPMJCR2235)」の一環として実施され、筑波大学と横浜ゴムとの共同研究契約に基づいて行なわれた。従来の電子顕微鏡画像ではノイズが多くゴム内部の輪郭が不明瞭であったものを、新たな手法により、網目状の分子ネットワーク構造を明瞭に捉え、さらに内部構造に関わる因子を数値化することに成功したという。 筑波大学 システム情報系 准教授 五十嵐康彦氏、横浜ゴム 研究先行開発本部 課長補佐 鈴木聖人氏らが取り組んだ研究では、ゴムの内部構造を撮影した電子顕微鏡画像に対して、ゴム分子がネットワーク状に凝集する領域のみを強調する画像処理手法を開発。ゴム材料に関する知見と数理的手法を組み合わせた新たな画像処理技術により、ノイズが多く輪郭が不明瞭な電子顕微鏡画像からでも、ゴム内部のネットワーク構造をナノスケールで明瞭に捉えられるようにした。 従来、電子顕微鏡画像からゴムの内部構造を解析するには、解析対象のネットワーク領域を手動で設定する必要があったが、新たな手法では自動で算出できるため、恣意性を排除しつつ、多数のサンプルを同時に解析することが可能となった。この手法を用いて各サンプルにデータ処理を施し、ゴムの物性に関わる因子となるネットワークの長さを算出したところ、実験値と高い相関を示し、同手法の妥当性が確認できたとしている。 ゴムは柔らかく伸びやすいという特徴的な物性を持つため、タイヤから医用材料に至るまで幅広く使用されていて、ゴムの内部には分子同士の結合による複雑な構造が形成されており、これがゴム材料の物性に大きな影響を与えることが知られている。 新たな手法の活用により、安全性や経済性に優れ、さらに省資源や省エネルギーなど社会課題の解決に貢献する高性能なゴム材料の開発が期待できるとしている。
Car Watch,編集部:椿山和雄