食べるべきは和食ではなく洋食系 京都のイタリアンが美味しいのはなぜ
京都のイタリアンのおいしさの秘密は?
さて、そんな中で最近非常に注目されているのがイタリアンです。2014年のNTTタウンページデータベースの人口10万人あたりのイタリアンレストラン軒数の都道府県ランキングでは和のイメージが強い京都が全国4位です。軒数もさることながら、料理の味と店の雰囲気も非常にレベルが高く、かつ値段もそれほど高くはありません。ではなぜ、京都のイタリアンは美味しいのか、ずばり結論から言えば、私は素材にあると思います。もちろん料理人の腕も大きいでのしょうが、特に腕の良い料理人が京都だけに集まっているということは考えられません。やはりここは素材、それも野菜にその理由があると思います。
京都の伝統的な料理の特色を一言で表わすならば、それは蔬菜(そさい)文化と言っていいでしょう。蔬菜というのは野菜とほぼ同じ意味です。一般に京野菜と呼ばれるものは、その多くは近郊で栽培されているものです。そのために、京野菜の名前には地名が冠されているものが多いのです。たとえば、九条ネギ、壬生菜(みぶな)、賀茂ナスといった具合です。歴史的に見ると野菜というものは、元来、都市周辺の農家によって専業的に作られてきたものだったのですが、京都には今も市街地を囲む野菜生産地域が存在しています。この存在が京都の野菜の素晴らしさを支えていると言ってもいいでしょう。こうした素晴らしい京野菜が使われているからこそ、野菜を豊富に使うイタリアンに素晴らしい料理が生まれるだと思います。 実際、東京の有名なイタリアンのお店がかつて期間限定で京都に支店を出したことがありました。私は東京のお店も京都のお店も両方行ったことがありますが、同じお店であるにもかかわらず、京都の方がはるかに美味しかったと記憶しています。ある時にそのお店のシェフのインタビュー記事を読みました。 「京都の野菜を使って料理を作りたかった。実際に農家の人と直接契約して野菜を仕入れたかった」というのが京都に店を出した理由だそうです。ほかの京都イタリアンのお店のシェフに聞いても多くの人が京野菜の魅力を熱く語ってくれます。 今回はイタリアンについて紹介しましたが、最初にお話ししたように京都はイタリアンに限らず、カレー、オムライス、ハンバーグといったいわゆる「洋食」と言われている分野、そしてすき焼きや焼き肉といった牛肉を使った料理の分野も極めて高いレベルです。そのあたりについては、また別の機会にお話しをしたいと思いますが、京都に行けば日本料理、懐石料理といったステレオタイプな見方ではなく、これらの料理にチャレンジしてみることをぜひお勧めしたいと思います。 (経済コラムニスト・大江英樹) ■著者のおすすめする京都のイタリアンレストラン■ 「サンタ・マリア・ノヴェッラ・ティサネリーア京都」 イタリアのフィレンツェにある世界最古の薬局「サンタ・マリア・ノヴェッラ」が京都に展開する町家イタリアン。地元の野菜をふんだんに使った美味しいお店。京都市中京区東洞院通四条上ル ------------------ 「サルティンバンコ」 地元産の食材を活用したイタリアンの枠にとどまらないユニークな料理の数々。9種類の野菜を使った前菜の盛り合わせは驚く。京都市中京区押小路通両替町西入ル金吹町460 ベルメゾン1F ------------------ 「hikari-yurari」 京都市役所の近くにある隠れ家的イタリアンのお店。奇をてらうことなくシンプルなお料理をリーズナブルな値段でいただける。京都市中京区押小路通麩屋町東入橘町611-1 バインオークトゥエルブB1