データ改ざん問題で神戸製鋼が会見(全文1)原因の一つに閉鎖的な組織風土
神戸製鋼のアルミや銅製品などのデータ改ざん問題について、同社は10日午後5時から記者会見を行い、不正の原因や再発防止策などを説明した。 ※一部、判別できない箇所がございますことをご了承ください。 司会:秘書広報部の堀内でございます。ただ今から、当社グループにおける不適切行為に関わる原因究明と、再発防止策に関する報告書について、記者会見を始めさせていただきます。加えましてお手元には、安全性の検証状況についても、資料を配付させていただいております。 まず初めに会見者のご紹介をいたします。まず中央、代表取締役会長兼社長、川崎博也でございます。 川崎:川崎でございます。 司会:皆さまから向かいまして左側。常務執行役員、山本浩司でございます。 山本:山本でございます。 司会:右側、常務執行役員、勝川四志彦でございます。 勝川:勝川でございます。 司会:それでは川崎のほうからご説明させていただきます。 川崎:このたびは、当社ならびに当社グループによる品質に関わる不適切な行為により、お客さま、取引先の皆さま、株主の皆さま含め、多数の皆さまに、多大なご迷惑をお掛けしておりますことを、深く、深く申し訳なく思っております。誠に申し訳ございません。 それでは座らせていただきます。
不適切な行為に関しての原因分析について
それでは説明をさせていただきます。当社では当社グループにおける不適切な行為の判明後、品質問題調査委員会を設置し、一刻も早い再発防止策の実行に向け、安全性の検証や原因調査を進めてまいりました。当社としては、このような事態を二度と引き起こさない再発防止策を徹底するために、さらなる知見と客観性が不可欠であるとの認識の下、10月26日から社外の有識者のみで構成される外部調査委員会に調査を引き継ぎ、現在はこの外部調査委員会において、事実関係の解明や、当社の実施した自主点検の適切性の検証などが進められております。当社はこの外部調査委員会の調査に、全面的に協力しているところであります。 この調査は年内をめどに完了するものと認識しておりますが、そこでは客観的な視点から本件の原因分析がなされ、また、それに基づく再発防止策が提示されることになると思います。最終的には外部調査委員会による報告も踏まえた再発防止策をあらためて検討することになると思いますが、本日は10月25日までの間に、当社において行ってきた社内調査をひとまず総括し、当社なりに本件不適切行為の原因を分析し、現時点でできる範囲での再発防止策を立案いたしましたので、それらをご報告させていただきます。 10月8日以降、当社は、アルミ・銅事業部門において確認された不適切行為を中心に、多くの不適切事案を報告してまいりました。その概要につきましては本報告書9ページのこれまでの公表案件についての事案の説明や、本報告書の添付資料2にまとめておりますので、ご覧いただければ幸いです。 まずこれらの不適切な行為に関し、当社が考える原因分析についてご説明いたします。本件は事業部門、製品の種類、製造体制や工場規模による違いはあるものの、今回の不適切事案においては、複数の部署にまたがる広範囲の関与者がおり、しかも長期間にわたり、不適切な行為が継続されたこと、さらにそれが社内で公に発覚しなかったという特徴があると考えています。当社といたしましては今回の一連の不適切事案の原因は、大別すると、収益評価に偏った経営と、閉鎖的な組織風土、バランスを欠いた工場運営、不適切行為を招く不十分な品質管理の手続き、契約に定められた仕様の遵守に対する意識の低下、不十分な組織体制という形で整理できるのではないかと考えております。そこでここからはその内容を1つずつ説明させていただきます。 原因の1つ目は収益評価に偏った経営と、閉鎖的な組織風土です。当社は厳しい経営環境の中、事業部門に対する収益重視の評価を推し進めると同時に、経営のスピードと効率化を図るため、その自立的運営を促進してまいりました。一方、経営自らが責任を持って工場の困りごとを解決する姿勢を見せなかったため、組織の規律は各組織の自己統制力に依存する状況となりました。そのような状況下、経営として工場において収益が上がっている限りは、品質管理面など工場で生じる諸問題を把握しようという姿勢が不十分であったと考えています。またこの経営管理構造そのものが、工場において声を出しても仕方がないといった閉鎖的な組織風土を生んだ主な要因ではないかと考えています。 原因の2つ目はバランスを欠いた工場運営です。不適切事案が最も多いアルミ・銅事業部門の工場や事業所では、収益面において会社に貢献することができず、苦しんできた歴史的な背景が伺えます。その結果、求められる規格と自社の工程能力との対比などが十分に行われないまま、顧客と仕様書を取り交わすなど、自社の物づくり力の把握を軽視し、受注を優先する風潮があったものと考えられます。その結果、顧客の要求品質を満足できない不適合品が発生した場合でも、顧客からのクレームがない限りにおいては、検査仕様や製品自体の強度などの仕様が軽視される風土が醸成されていったものと考えております。 また製造拠点の専門性を重視するあまり、製造拠点をまたがる人事異動が積極的には行われなかった結果、閉鎖的な組織や人の固定化といった状況が生じていたと考えております。また製造と品質保証との間の人事異動が行われ、本来の牽制機能が形骸化したり、あるいは不適切な行為に対する黙視の指示が行われたりするなど、品質コンプライアンスに対する感度が鈍化しやすい環境が生じていたと考えております。 原因の3つ目は、不適切な行為を招く不十分な品質管理手続きです。不適切な行為を行った部署は事案により異なりますが、検査データ入力後に入力内容に介入することが可能になっていたことが、改竄や捏造の機会を与え、不適切な行為を助長してしまったものと考えております。また、一部の工場では、顧客の規格よりさらに厳しい社内規格を設けていました。本来、出荷基準は顧客規格に基づき判断されるべきところ、社内規格を満たしていなければ出荷できない仕組みとしていたことに加え、徐々に顧客規格の厳格化が進み、一部の製品においては社内規格はそもそも守れない規格と認識されるようになっていました。社内規格を満たせなくなった場合、本来は工場の生産能力の見直しや、顧客へ、規制、規格の緩和を申し入れるべきところ、それら正規の手続きを経ず、改竄が行われるようになったと考えています。 原因の4つ目は、契約に定められた仕様の遵守に対する意識の低下です。顧客仕様への適合よりも、むしろ顧客からのクレームの有無が重要であるとの、品質に対する誤った認識に基づく仕様遵守意識の欠如により不適切な行為が継続され、時の経過とともに不適切な行為を申告することがますます困難になり、次第に契約に定められた仕様を軽視する風土が根付いていったと考えています。 原因の5つ目は不十分な組織体制です。アルミ・銅事業部門では、経営効率の観点から、品質管理体制も事業所単位で完結していたことに加え、各事業所では品質管理を行う部署と、品質保証を行う部署が同一組織に配置されるなど、品質保証部署の独立性が保たれていない状況にありました。また事業部門の直轄部署である規格管理部や技術部においても、品質に関わる特別なモニタリングは行われておらず、事業所主体の運営に拍車を掛けると同時に、とりわけ品質については外部からの牽制機能がほとんど働かない状況にあったと考えております。