TKOで初防衛した村田諒太がゴロフキンに「勝つ見込みあり」とあの人が…
「取るより難しい」の格言がある初防衛戦をTKOで飾った。 「ほっとした。エンダムの1、2が(KOシーンはなかったので)ここで倒さないと、やっぱたいしたことないじゃん、と思われる。そうならずに、ほっとした。結果でどうや、こうやと言われますからね。ノックアウトという形で期待にも応えられた。がっかりさせなかったのがよかったかも」 日本人で初めてミドル級の世界王者となった竹原慎二も初防衛戦はクリアできなかった。 なぜ初防衛は難しいと言われるのか。 村田の考える一般論はこうだ。 「チャンピオンとしてリングに上がるプレッシャーもある。研究される立場もある。満足感が出て、ハングリーさを失う。いろんな要素がある。複数の理由があるんだろうけど、どれにあてはまるかは、選手によって違う」。ひとつ抜けているのが、多くのボクサーが、初防衛戦では、オプションの関係でランキング1位との指名試合を命じられることにある。これらの条件下、最強の挑戦者と戦えば負ける確率も上がる。だが、村田の場合、今回は、先を見据えて、大きなリスクのない相手を選んだ。 村田にあてはまる理由は内なる敵の存在だった。 「僕にとってプレッシャーはある。満足心はあまりない。なんかわからんけれど、なんかが難しい」 この試合をESPNが全米に生放送した。強さを見せつけ、世界へ発信しなければならないというプレッシャーもあっただろうが、一番の敵は、ハングリーさの欠如だった。 「ハングリーさがなくなっている気がするんです」 アッサン・エンダムとの語り継がれるような2試合を経て、ミドル級のベルトを巻いた村田は、ぽろっと、そういう心境を口に出したことがある。 金メダルに続く世界のベルトの達成感。周囲の人々への恩返しができたという安堵感。メンタル面でのハングリーさがなくなったと同時に、スポンサーが13社もつき、日本のボクシング史上最高に稼ぐ男となった。待遇面でも本当にハングリーではなくなっている。 まさに見えない敵である。 だが、村田は、初防衛戦に、その翳りを見せなかった。 なぜか?