長引くせきや体重減少…やせている中高年女性は注意 お風呂や畑の細菌が原因、増える肺の感染症「肺NTM症」 医師に注意点を聞いた
7年間で全国で2.6倍に
長引くせきやたん、体重減少…。こうした症状が出る「肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)」の患者が近年、やせ形の中高年女性を中心に国内で増えている。身近な場所にすむ細菌が肺に感染することで発症するが、一般にはあまり知られていない。 【ひと目で分かる】肺NTM症になると肺はどうなる
病気の特徴や注意点は?
30年にわたりこの病気を診療・研究してきた長野県立信州医療センター(須坂市)副院長兼感染症センター長の山崎善隆さん(60)に、特徴や治療法、どんなことに注意すればよいかを聞いた。 (中山有季)
「肺MAC(マック)症」とも呼ばれる
肺NTM症は、非結核性抗酸菌(NTM)という細菌の感染による病気。国内では、肺NTM症の約9割はアビウム菌とイントラセルラーレ菌という2種類の感染によるため、菌の英語での呼び名などから「肺MAC(マック)症」と呼ばれる。これらの菌は浴室の給湯口やシャワーヘッドのぬめりの中、家庭菜園や畑の土の中などの生活空間にすんでいる。感染経路は特定されていないが、霧状の水やほこりと一緒に菌を吸い込むことで肺に定着して、感染すると考えられている。
初期は無症状…何年か経つとせきやたん
肺マック症の多くは「結節・気管支拡張型」と呼ばれる進行が緩やかなタイプ。初期は無症状が多く、何年かたつと長引くせきやたん、血が混じる血たんなどの症状が出る。進行すると体重減少や息切れ、倦怠(けんたい)感が現れる。やせ形の中高年女性に多いのが特徴だが、理由は分かっていない。
患者は年々増加している
慶応大医学部講師の南宮湖さんが発表した論文によると、人口10万人あたりの罹患(りかん)率は2007年に5・7人だったが、14年の調査では14・7人となり7年で2・6倍に増加。全国民間検査施設データでも17年に19・2人と増加傾向にある。
山崎さんによると、感染すると気管支の周囲に小さな肉芽腫(にくげしゅ)が点々とできるため、胸部エックス線撮影をすると、拡張した気管支に沿って小さな塊状の結節陰影が確認されるのが特徴。90年ごろから胸部CT検査が普及し、病気の知識が広がって診断される例が増えたという。信州医療センターでは現在通院している患者は250人ほどで、年間20~30人が新たに診断される。