長引くせきや体重減少…やせている中高年女性は注意 お風呂や畑の細菌が原因、増える肺の感染症「肺NTM症」 医師に注意点を聞いた
治療は抗菌薬 だが「完治は難しい」
治療は抗菌薬(抗生物質)を使う。肺マック症の場合は3種類を1年半~2年服薬し、症状が改善したらやめる。ただ体内から完全に除菌することは難しく、外から繰り返し菌を吸い込むこともあり、数年後にまた症状が出たら再度服薬を始める。山崎さんは「完治は難しく、一生付き合う可能性がある病気だ」と説明する。
注意が必要なのは急速に進行し、死に至る場合もある「線維空洞型」だ。気管支の周囲にできた肉芽腫が拡大、融合して大きな塊になって内部が壊死(えし)。数年で直径5センチを超える空洞になることもあり、肺機能が悪くなって呼吸困難になる。早期発見で空洞が一部分であれば手術で除去することもできるが、広がっていれば手術はできない。特にリウマチ、膠原(こうげん)病、肺気腫を患う人がかかりやすい。
エックス線検査で発見されることが多い
肺NTM症、肺マック症について、どんなことに気を付ければいいのか。山崎さんは、健康診断のエックス線検査で肺に異常を指摘されて病気の発見につながる場合が多いとして、「たんの検査で診断するが、1回では陽性にならないこともある。一度異常を指摘されたらその後も経過観察が必要。何回かたんの検査を受けてほしい」とする。陽性だと知っていれば、症状が出たときに早期受診につながるからだ。
服薬は長期にわたることが多い
服薬治療は長期にわたることが多いが、薬疹や食欲不振、下痢、便秘といった副作用が出たり、肝機能や腎機能障害を起こしたりする場合もある。一方、自己判断で服薬・中断を繰り返すと血中の薬の濃度が低くなり、菌が徐々に慣れて耐性菌になり治療が難しくなる恐れがある。山崎さんは「予後や薬の効果の説明をよく聞き、自分に合う治療方針を医師と相談することが大切」と強調する。
悪化や再発を防ぐために体重の維持を
病気の悪化や再発を防ぐためには、シャワーヘッドなど浴室の掃除をしっかりすることや、土いじりをする際にはマスク着用を心がけたい。また、山崎さんは、筋力が落ちないようカロリーやタンパク質の多い食事で体重を維持することやウオーキングなどの運動も勧める。体重減は呼吸筋の疲労につながり、呼吸筋が薄くなると十分にせき払いができず、外から入った菌を体外に排出しにくくなるという。そのため、体重管理なども含めた「日常の健康管理が大切」と話している。
【非結核性抗酸菌(NTM)】
結核菌とハンセン病を引き起こすらい菌を除く抗酸菌の総称で、アビウム菌とイントラセルラーレ菌など菌の種類は200を超える。いずれも環境常在菌で、土壌や水の中に生息する。肺NTM症を発症しても、結核とは異なり、感染した人からほかの人には感染しない。