「シリア軍港からロシア軍艦艇が脱出」報道、露外相が否定 反体制派攻勢でロシア苦慮
ロシアが支援するアサド政権が反体制派の攻勢で劣勢に立たされているシリア情勢を巡り、ラブロフ露外相は7日、ロシアが使用権を持つシリア西部タルトスの軍港から露軍艦艇が脱出したことが衛星写真で確認されたとする一部報道について「地中海で(露軍の)軍事演習が行われている。衛星写真にはおそらく何か別のものが撮影されたのだろう」と述べ、否定した。タス通信が伝えた。 【写真】ホムスの田園地帯で軍用車両に座る反乱軍兵士ら 訪問先のカタールの首都ドーハで開かれた国際フォーラムで司会者の質問に答えた。ラブロフ氏は「『ロシアはシリアで負けた』と私に言わせたいなら、試み続ければよい」としつつ、「ロシアはシリアでテロリスト(反体制派)が優位に立たないようあらゆる手段を講じている」と述べた。 ドーハでは同日、シリア情勢を協議するロシアとイラン、トルコの3カ国枠組みの外相会合も開催。ラブロフ氏によると、3カ国はアサド政権と反体制派の対話を確立すべきだとする立場を確認し、戦闘停止へ協力する方針で一致した。 ロシアは今回の反体制派の攻勢に苦慮しているもようだ。ロシアは2015年、アサド政権側でシリア内戦に軍事介入し、戦況を政権軍側に覆した。ロシアは介入を通じ、旧ソ連時代から租借してきたタルトスの軍港に加え、北西部のヘメイミーム空軍基地の使用権も獲得。中東やアフリカなどに軍事的影響力を行使する拠点としてきた。 ロシアは今回の反体制派の攻勢でアサド政権が打倒された場合、これらの拠点を失いかねないとみて反体制派への空爆に着手した。 反体制派が攻勢に出た背景には、ロシアがシリア駐留戦力を引き抜いてウクライナ侵略に投入するなど、シリア防衛を手薄にしていたことがあるとの見方も出ている。(小野田雄一)