「ドルチェ&ガッバーナ」の金髪のマドンナについて語り合う ミラノに歌舞伎なブランド登場? 2025年春夏ミラノ日記Vol.5
村上:私はむしろショーのタイミングでは怒りに震えていたのですが、その後少し冷静さを取り戻し、「怒りすぎていたかもしれない」と反省したくらいです(笑)。
怒りを感じた理由は木村さんが言う通り、黒人モデルにもアジア人モデルにも金髪のウイッグを被せたこと。螺旋階段の周りは鏡ばかりで、金髪姿の自分の姿をまじまじと見た後にランウエイを歩くという、会場のセットというか演出にもモヤっとしてしまいました。アイデンティティとの乖離に傷つく黒人やアジア人モデルはいないか、心配だったんです。「ドルチェ&ガッバーナ」は、人種差別的な表現で炎上したことがあります。そんな過去も頭によぎりました。
とはいえ、あれはマドンナへのオマージュと考えれば、納得できるところもあります。そしてマドンナって人種や性別、性的志向などを超越した、ある意味多様性の象徴。そんな女性をミューズに選び、ある意味コスプレに近いウイッグとコーンブラでオマージュを表現するのは、むしろ多様性の表現方法なのかも?今は、そんな風に捉えています。
一方、私の当初のような考えの人が存在していることは事実です。正直ブランドは特定の誰かに向けたモノ作りで強いコミュニティーを作っていけばいいと思うし、「ドルチェ&ガッバーナ」はまさにそんなブランドの代表格で、ゆえにオートクチュールに相当するアルタモーダの顧客は日本にも結構いらっしゃると伺っていますが、これからも誰かを傷つけない形で強いコミュニティーを発展させてほしいですね。
肝心の洋服は、いつも通り仕立ての良いイタリアンセクシーでした。レースやチュール、オーガンジーでも、上質なシルクサテンでも、コーンブラは自然に溶け込んでいます。地味に思えるかもしれないけれど、ものすごい縫製技術です。コーンブラは、トレンチコートやジャケット、スリップドレスと渾然一体になっていましたね。強い黒、甘いベビーピンク、 そして情熱の真紅。「ドルチェ&ガッバーナ」ワールド全開でした。