【独自】「黒い雨」新基準 岡山で提訴へ 降雨域外居住 県に被爆認定求め
広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を巡り、救済拡大に向けた国の新たな認定基準でも被爆者健康手帳の交付を却下された岡山市の女性(83)が、「黒い雨を浴びた記憶がある」として岡山県に却下処分の取り消しを求め、近く岡山地裁に提訴することが4日、分かった。女性側が取材に明らかにした。 女性側は、雨が降ったと認める範囲が新基準下でも不十分と主張しており、降雨域外とされる当時の居住地で雨が降ったと認められるかが焦点となる。新基準を踏まえた訴訟は広島以外で初めて。 厚生労働省は2022年4月、(1)黒い雨に遭ったことが否定できない(2)がんなど11種類の疾病に罹患(りかん)しているか、白内障の手術歴がある―との要件をいずれも満たせば被爆者と認める新基準の運用を始めた。従来の援護対象区域の外で雨を浴びた人の救済拡大を命じた21年7月の広島高裁判決を受けた措置。従来区域に加え、原告団などが過去の調査で確認されたと訴えた二つの降雨域を参考に審査する。 女性は4歳時に広島県津田町(現廿日市市)の当時の自宅近くで黒い雨に見舞われたとしており、対象疾病の肝炎を患うものの、自宅は新基準下の降雨域から南西に約3キロ離れている。今年3月、岡山県に被爆者健康手帳の交付を申請したが、7月末に「当時いた場所に黒い雨が降ったことが確認できない」と却下された。 県内では7月末までに女性を除く22人が新基準で認定されており、県福祉企画課は「黒い雨を浴びたという蓋然(がいぜん)性は新基準下の降雨域などで判断する」とする。女性の代理人は「具体的な記憶があるのに却下するのは高裁判決の趣旨に反している」と主張している。 国の新たな認定基準を巡っては、広島県内で手帳交付の却下処分を受けた46人が、さらなる降雨域の拡大や疾病要件の無効などを訴え、処分取り消しを求めて昨年4月から順次、広島地裁に集団提訴している。