卓球・最強中国に勝つための“新機軸”。世界が注目する新星・張本美和が見せた「確率の高いパターンの選択」
持続する強気さ、そして得点率の高いプレーの選択
これまで中国選手を倒すには、最後に試合を決め切る「ここでそれがくるのか!」と唸らされるようなサプライズプレーが必要だと言われてきた。それは今も課題としてあるだろう。 しかし、この試合での張本美和は、その常識を超えたのかもしれない。 やってきた練習が間違いないこと。最後の最後に接戦になっても、その接戦に持ち込むまでやってきたプレーが間違いではないこと。その2つを証明するかのように、彼女はただ純粋に、一番やりやすい形と、この試合で一番得点率が高かった展開を勝負所で選択し続けた。 それは、簡単な言葉で言えば「さっきまでと同じことをしている」となる。しかし、「さっきまでと同じサーブ、同じ形」を自ら選択するということは、かなり勇気のいること。本来なら「まだ使っていないサーブはないか」と模索する場面でもあるからだ。 「同じことをやれば勝てる」。そんな確信のようなものを支えていたのは、間違いなく、「強気さ」という要素。そして「確率の高い得点パターン」を選ぶ確かな目だ。それが、中国代表の落選も視野に入っているという精神状態の王芸迪を崩した。 10-10という最大の勝負所でさえ、ロングサーブを思い切って強く台にたたきつけにいこうとして、サーブミスをしてしまった瞬間。逆に、あの強気さを見せた時点で、この試合での張本の勝利は、すでに確定的なものになっていたのかもしれない。 強気さと、確率の高い得点パターンの選択。パリ五輪での打倒中国への光が、少しずつ見えてきた。 <了>
文=本島修司