【比較インプレ】ヤマハ「MT-03」VS KTM「390 DUKE」VS カワサキ「Ninja ZX-4RR」〈ノア セレン編〉
3社3様の「400はこうあるべき」が見えてきた気がする
同じスポーツモデル、同じ排気量でシングル、ツイン、4気筒が揃ってるって、けっこう贅沢なハナシじゃない? しかも3台ともメーカーが違って、KTMとヤマハは同排気量で他の気筒数は作っていないという、「ウチの400はこの形式で勝負するんだ!」という意思、方向性、コダワリのようなものが感じられるのもアツイじゃないか(ちなみにカワサキのパラツインのニンジャ400/Z400も名車ですね!)。 【写真はこちら】「MT-03」「390 DUKE」「Ninja ZX-4RR」の全体・走行シーン なんといっても注目はZX-4RRでしょう。唯一無二の4気筒でしかも77PSという前人未到の超ハイスペック。レプリカ時代を知るベテランライダーも納得の性能かつ、600ccがトゥーマッチと感じていた人にもフィット。400cc枠ではあるものの、そのスペックゆえに枠にとらわれない新たなスポーツバイク像すら提案してくれている。 乗ってもやはりクラスレスだ。シングルやツインが一般化したこのクラスにおいては重めの車体は安定志向に感じ、それでいて高回転まで回していった時の突き抜け感は完全にライバル不在。一般的な峠道では十分すぎる動力性能で、400ccでも「ちょっと速すぎないか? 」と思ってしまうほどだ。一方で常用回転域はかつてのCB-SF系のような豊かなトルク、という感覚ではないため、ツーリングというよりはサーキットも視野に含めたスポーツラン向けだろう。 対照的なのはKTMの390DUKE。シングルを突き詰めるのが得意な同社は今回のモデルチェンジで排気量アップを果たし更なるスポーツ性を追求。高回転型のシングルは回り切る領域でシングルらしからぬ伸び切りを見せ、軽量な車体を怖いぐらいの速さで次のコーナーに到達させてくれる。ブレーキも超強力でライダーの意図以上の超減速が可能。非常にストイックで、公道ワインディングですら、サーキットのように頭を使ってコーナリングを組み立てていくことが求められるほどだ。 実は乗用回転域も使いにくくはないし、今回、シート高も下げられてフレンドリーさが向上してはいるものの、その性格はやはり尖ったもの。軽量さゆえ日常的にも、あるいはツーリングでも接しやすさはあるとは思うが、いつの間にかライダーのスイッチが入ってしまうという、レディ・トゥ・レースなのである。 良い意味で旧くさいのがMT-03だ。こんなに先鋭的なルックスなのに、シートがとても低くて車体の重心が近くに感じられる絶対的安心感がある。低い重心からちょっと遠くに感じられるフロントまわりがクニャリクニャリと行きたい方向に自然と向いてくれ、安心感を持ってアクセルを開けていけるのは、かつてのネイキッドモデルのような親しみやすさ。 ツーリングでもスポーツでも街乗りでも、ライダー側のテンションにいつでも寄り添ってくれるような懐があり、その証拠に疲れが出始めた撮影終盤にはみんながMTに乗りたがっていたほどだ。これは排気量もキッチリ400にして、バリッとテコ入れしてほしい名車だ。 3車3様のスポーツ400ジャッジメント。みんな違ってみんな良いけれど、「日本車らしい」もしくは「400らしい」と思える汎用性とスポーツ性の好バランスを持っていたのはMTかな? この方向性のナイスバランス400が増えて欲しいと思う。
ノア セレン