「井上尚弥がいたから今の俺がある」今夜2年7か月ぶり世界戦に挑む”激闘王”八重樫東の覚悟
プロボクシングのトリプル世界戦(23日、横浜アリーナ)で2年7か月ぶりの世界戦に挑むのが、元世界3階級制覇王者の八重樫東(36、大橋)だ。王者は、名のある強豪、日本人ボクサーを蹴散らしてきたIBF世界フライ級王者のモルティ・ムザラネ(37、南アフリカ)である。激戦必至。”激闘王”の覚悟に迫った。 前日計量は50.8キロのリミットでクリアした。ムザラネとは40秒近いフェイスオフ。「長いっすよ、別にいいんですけど」。八重樫は会場内の仕切られた控室スペースに帰ると、サプリメント容器に小分けしておいた10種類以上のサプリの錠剤をまるでお菓子でもかじるように次から次へと口にほうりこんだ。 IBFは当日朝にもう一度計量があるため、本来なら一度、横浜へ帰るが、22日は、都内の計量場所近くのホテルに泊まることにした。幸い会場が、横浜アリーナのため、当日計量後に横浜に借りているワンルームマンションに帰り、試合まで休養を取る。 「時間の流れるスピードがここから早い。自分がやれることをしっかりとやる」 ライトフライ級時代に「パワーが絶対だという考えがあって」計量後に体重を8キロも増やしボディで倒されたという苦い失敗がある。当日計量のリミットは、プラス4.5キロ。そのままの体重をキープして夜のリングに上がるつもりだという。 「ボクシングは必要最低限、36分間を動ききるガソリンだけを積んで勝負にいった方がいい。相手は戦車。こっちは軽くて小回りが利く戦闘機でいい」 プロ15年のキャリアで導いた結論である。 ムザラネへの勝利イメージもできた。過去にWBA世界バンタム級スーパー,IBF世界同級王者の井上尚弥(26、大橋)の次戦の有力候補WBO世界同級王者、ジョンリエル・カシメロ(30、フィリピン)らの強豪を倒し、元5階級王者、ノニト・ドネア(36、フィリピン)への挑戦経験もある王者である。 「一歩間違えると気がつかない間に泥沼に引き込まれる。それが怖い。注意点は左ジャブですね。だから理想は、2Dボクシング。つまり相手の距離に入っていかない平面のようなボクシングでポイントを奪う。3Dの感覚で入りこむと、あのリーチの長いジャブを被弾する。でもジャブが見づらく、2Dが機能しないなら、今までの接近戦より、さらに1歩、2歩前に入っての超接近戦を仕掛ける。相手の反応を見て嫌がることをコツコツやっていくしかない。駆け引きも必要。後の先。そんなボクシングで難攻不落を崩します」 2Dと超接近――。対照的な2つの戦略が用意してある。 「アフリカ人はマラソンと一緒でずっと同じぺースでボクシングができる。相手が落ちても関係がない。そういう人種。でも瞬発的なスプリンター的な部分は弱い。ボクシングはインターバルスポーツ。区切る時間があり、そこはマラソンとは違う。どんな風にして乱打戦に持っていくか。最後は我慢比べになり根性がある方が勝つ」