上尾鷹の台イレブン

　10月13日、第103回全国高校サッカー選手権埼玉予選はいよいよ決勝トーナメントが始まった。ここまで2試合を勝ち抜いてきた上尾鷹の台は坂戸西と対戦し、先制しながらもひっくり返され、2-4で惜しくも敗れた。 【フォトギャラリー】決勝トーナメント1回戦試合風景 　上尾鷹の台はキャプテンのMF9中村悠里(3年)が強烈な左足ボレーを決めて前半18分に先制ゴール。このプラン通りの展開に「夢を見させてもらいました」(横田遼一郎監督)と沸き立った上尾鷹の台だったが、自力で勝る坂戸西にジリジリと攻め込まれると、前半のうちに逆転を許し、後半も追加点を奪われ2回戦進出とはならなかった。 　「総体で市立浦和にも勝っていたので、坂戸西さんは強いとわかっていました。うちはいかに先制して我慢できるかというところで、先制するところまではプラン通りだったんですが、PKを与えてしまって。ただ選手が試合中(失点後)に円陣を組んでというのは今までなかったので、新しい一面を見れて、大人になったなと思いました。勝たせてあげたかったです」。 　勝つことはできなかった。それでも選手たちが勇敢に戦い成長した姿を見せてくれたことで試合後の横田監督はどこか嬉しそうだった。 　そして「インターハイで県大会を目指していたんですが、行けなくて悔しい思いをして。残った(3年生の)7人は選手権で県大会に行くと言って残ってくれて果たしてくれました。県大会に連れてきてくれたので本当に感謝していますし、最後まで諦めない姿勢を見せてくれたので、本当に成長してくれたと思います。これからもそういう気持ちを大切にしていってほしい」とここまでチームを引っ張ってきてくれた3年生に労いの言葉を送った。 　この試合で2ゴールの活躍を見せたキャプテンの中村。どこからでも狙えると言わんばかりの左足の威力は強烈で、先制ゴールには会場からもどよめきが起こり、敵将も「あんな凄いシュートを決められて驚きました」と舌を巻くほどだった。 　そんな中村、「自分は元々GKで去年の選手権でもGKだったんですが、それで悔しい思いをしてここまでやってきました」。実は2年生までのポジションはGK。「今日のGKの子が高校からサッカーを始めた子なので、中村君には1、2年生の時はGKをやってもらっていて、自分の代になってからFPをやってもらいました」(横田監督)。チーム事情もあったとのことだが、元GKとは信じ難い働きぶりであった。 　インターハイ後に前キャプテンが引退し、キャプテンを引き継いだという中村は「自分がシュートを決めてやろうという気持ちで入っていいシュートを決められて、チームもいい雰囲気だったんですけど、1点目2点目と失点してしまって、雰囲気も悪くなってしまった。でもみんな最後まで頑張っていましたし、自分も1点でも多く決めようとやっていました」と試合を振り返った。 　そして「3年間県大会を目指して、先生方を県大会に連れていきたいとここまでやってきました。最後にここまで来れてよかったです」と県大会にこれたことが良かったと話したが、その時に見せた涙は"勝ちたかった"という悔しさに溢れていた。

　1-4とされてからも試合終了まで全く諦めず、自身のゴールで2点差に縮みてみせた中村。 　「下の子たちは初心者の子も多いんですけど、終わった後に"次は俺たちが！"と話していたんで、この気持ちを忘れないでやってくれると思います」(横田監督) 　キャプテンが魅せたラストダンス。次の世代に気持ちはしっかり届いていた。 (文・写真＝会田健司)