霊能力者の石黒賢“黒田”が一世風靡…30年の歴史を感じるオカルト番組ブーム<古畑任三郎>
今から30年前になる1994年4月13日に放送が始まった三谷幸喜脚本の「警部補・古畑任三郎」。田村正和演じる主人公・古畑任三郎が、完全犯罪をもくろむ犯人たちの難解なトリックを卓越した推理力で解いていく、言わずと知れたミステリードラマの金字塔だ。FOD・TVerでは「#ドラ活 浸れ、超自分的ドラマ生活。」を開催中で、第1シリーズの「警部補・古畑任三郎」第1~3話は7月6日(土)まで無料公開されている。石黒賢が自称・霊能力者の犯人役を演じた第9話を紹介する。(以下、ネタバレが含まれます) 【写真】「古畑任三郎 第3シリーズ」(左から)石井正則、田村正和、西村まさ彦 ■霊能者・黒田が生放送中に死体を見つける 第9話「殺人公開放送」は、テレビ界の人気者である霊能力者・黒田清(石黒)が殺害行為を隠ぺいする回。黒田が河原で石の下に赤いスカーフを置いたところを、チンピラ風の中島が見かける。霊能番組にも出演して、世間に顔を知られている黒田。そのトレードマークのようなサングラスとライダージャケット姿で黒田と気付いた中島は「何をしていた」としつこく絡む。挙句の果てに取っ組み合いとなり、はずみで土手から落ちた中島は、河原の石で頭を打って死んだ。あわてて死体を草むらに隠し、バイクで立ち去る黒田。 テレビ局で霊能番組の公開録画が始まった。スタジオには、古畑任三郎(田村正和)と部下の今泉(西村まさ彦)も観客として来ていた。霊視で河原の赤いスカーフが映るという黒田。現場にとぶ取材班。だが、そのカラクリをゲストの科学者・神宮(山口崇)に見破られた黒田は、ついに死体が見えると言い出した。そして、取材班に発見される中島の死体。感心するスタッフ、観客。勝ち誇る黒田。だが、古畑は収録したテープから、黒田の犯罪を立証していく。 ■古畑はスプーン曲げをしながら犯人を追い込んでいく 人気ドラマの名作は、何十年という時を経て鑑賞しても、古臭さをあまり感じないことが少なくない。当然、電話やパソコンなど小道具の一つ一つに歴史を感じたり、登場人物のファッションなどに懐かしさはあったりするが、セリフ回しの小気味良さだったり、ストーリーの伏線回収が高クオリティでまとめられていたりすると古さは気にならないものである。「古畑」シリーズも熱烈ファンの存在が多い作品で、“何度見ても面白い!”、“30年前とは思えない傑作”と名高いが、今回紹介する第9話だけはどうしたって今見ると一昔前の時代だと思ってしまうだろう。 というのも、放送された1994年は70年代から徐々に始まったオカルト番組ブームがまだ続いていたころ。霊能力者が行方不明者を探す企画や、心霊写真、UFO、未確認生物、超常現象、ノストラダムスの大予言、都市伝説など、ありとあらゆるオカルトをテーマにした番組がたくさん放送されては消えていた時代だ。今見れば、うさん臭い雰囲気の番組もあったであろう。 「殺人公開放送」の黒田も、霊能の力が舞い降りてくる瞬間には汗をダラダラかいて、床をはいずり回り、息も絶え絶え「僕が頭の中で見た景色です…」などと殺人現場の様子を言い当てる。神宮に「役者になりなさい。名演技だ」と冷めた目で言われるくらいの“熱”が入っている。この空気感というのは、令和のテレビ番組には皆無。とても古臭い。しかし、もちろん、古さを感じたとしても古畑の推理やキャラクターのおかげで今見ても十分面白い。 黒田にスプーン曲げをさせながら犯行の疑惑を畳みかけていく古畑の姿だけでも、あのオカルト全盛の時代にしか作れないドラマだったなと感じる第9話である。