史上初のメダル獲得を狙う〝マイル侍〟6・27開幕の日本選手権で代表選考レースが決着/スポーツコラム
今夏のパリ五輪の開幕まで42日。多くの競技で日本代表が決まっていく中で、陸上は6月27日に開幕する日本選手権(新潟)で、代表争いが決着する。男子100メートルで、5月末に9秒99をマークしたサニブラウン・ハキーム(25)=東レ=が内定するなど、マラソンと競歩も含め、19人がすでに代表入りを決めている。 男子100メートルの残り2枠の争い、そして〝リレー侍〟こと400メートルリレー(四継)のメンバー争いに注目が集まる。ただ、メダル獲得の期待で言えば、1600メートルリレー(マイルリレー)も負けてはいない。大会最終日の最終種目として行われることが多いマイルリレー。会場内の全選手の視線を集め、緊張感と高揚感が漂う種目でもある。 同種目では世界選手権、五輪ともにメダルはまだない。悲願のメダル獲得へ―。400メートルで日本歴代3位の44秒88の自己記録を持つ、佐藤風雅(28)=ミズノ=は、昨夏の世界選手権(ブダペスト)で日本新記録の44秒77をたたき出した佐藤拳太郎(29)=富士通=とともに、主力となることが予想される。佐藤風は「国内で400メートルが盛り上がっている。しっかり世界にこの熱を持っていきたい」と意気込んでいる。 2021年東京五輪の代表選考を兼ねた日本選手権は5位。リレーのメンバーにも選出されなかった。当時を振り返り、「勝負をしにいく気持ちが弱かった」。自分と向き合い、出た答えは「個人種目で世界へ。日本選手権優勝よりも、さらに上の場所に行きたい」。日本ロングスプリント界を引っ張る覚悟が決まったと受け取った。 その後、2022年の世界選手権(オレゴン)で、個人もリレーも代表入り。マイルリレーは五輪も含め世界大会で18年ぶりに決勝進出。日本新記録の2分59秒51をマークし、過去最高タイの4位となった。メダルが現実味を帯びた23年の世界選手権(ブダペスト)では、個人で佐藤拳、佐藤風の2人が44秒台に突入し、壁を破った。勢いのまま臨んだリレーは予選で散った。 再起のため、考えに考え、話し合ったという。足りなかったのは「チーム力。絶対的な安心感がなかった」。オレゴンでは、エースのウォルシュ・ジュリアン(富士通)への厚い信頼の下、言葉は交わさずとも同じ方向を向いていると感じていたが、ブダペストではそれがなかった。五輪イヤーは「チーム作りをしっかりしよう」と佐藤風の中でまとまった。