「いまは デジタル広告 の過渡期。10年後の未来を守るための行動を起こすときだ」:キヤノンマーケティングジャパン デジタルコミュニケーション企画部 部長 西田健 氏
──文化や価値観の違いが、プラットフォームにおける劣悪な広告環境を生み出しているということだろうか?
その可能性は否定できないが、広告を出すか出さないかは、企業やブランドが自らの意思に基づいて決めることであるのは間違いない。どのようなブランドイメージをどう守っていくか、あるいはどう変えていくか、自分たちの選択と決定が重要と言える。 悪質な広告環境か否かという議論を抜きにしても、デジタル広告はパフォーマンスに特化した内容になりやすい。その表現方法もほかのチャネルとは異なる、デジタルならではの手法やクリエイティブが用いられる。 たとえば我々のように、厳格にブランドイメージをコントロールしようとする企業であっても、「いまどき」の表現で構成された広告、とくに動画やソーシャルメディアなどでは、現場の判断で出すこともあるだろう。ブランドイメージに責任を持つコーポレートの立場からすれば難しい問題であるが、よりパフォーマンスを向上させたい、売上を上げたいと考える現場の社員からすると、ブランドイメージに関係なくデジタルでユーザーに受け入れられやすい表現をすべきだと考えている場合もある。 いま、デジタル広告は過渡期なのではないだろうか? 何がユーザーに受け入れられ、何がユーザーに受け入れられないのか。デジタルの在りようを受け入れるべきなのか、マス広告のような管理された世界を構築すべきなのか。いまは次のスタンダードが確立される前の混沌であり、我々もその先の未来のための選択をする必要がある。
──では、今後広告主はどうしていくべきか?
混沌にあるからこそ、デジタル上のリテラシーを高めるために、人材育成に力を入れなければいけないだろう。しっかりとしたリテラシーを持った宣伝担当者やWeb担当者、デジタル担当者が必要だ。また、マス担当だからデジタルはわからない、デジタル担当だからマスはわからないでは、もはやマーケティングの全体像をつかめなくなってきている。両方の知識を蓄えていくことも必要といえる。 我々は今年、宣伝、デジタル、Web担当者向けに社内でデジタル広告勉強会を開こうと考えている。弊社ぐらいの規模の会社でも、そうしたところから始め、次世代の広告マーケティングとは何かを考えていかねばならない。教育を怠れば先の未来を守れないだろう。長期的な視点を持って、たとえば10年後どうなっていたいかを考え、向き合っていくべきではないか。 西田 健/日立製作所に入社後、国内外の宣伝制作・販促、ブランド戦略などを手掛けるとともに、コーポレートサイトやソーシャルメディア公式アカウントの運営などWeb戦略にも従事。2017年に大日本印刷へ入社しコミュニケーション活動全般を担当後、2019年にキヤノンマーケティングジャパンに入社。デジタル全般のコミュニケーションに携わり、現在に至る。 Written by 島田涼平 Photo by 三浦晃一
島田涼平