チャンネル登録者数49万人超!気鋭の動画クリエイター五分目悟に聞く“創作の裏側”
YouTubeでオリジナルのCGキャラクターたちによる群像劇を発信している動画クリエイター、五分目悟さん。シュールで独創的なストーリーに中毒者が急増し、チャンネル登録者数は49万人(2024年8月現在)を超える人気を誇っている。そんな五分目さんが感じる日常の違和感をオール書き下ろしで綴るエッセイ『真ん中のひじ掛けの妖精』が、8月6日に発売された。誰もが心に抱える思いを圧倒的な文章力と鋭い視点から表現し、多くの読者の共感を得ている彼に、初エッセイに込めた想いなどを聞いた。 【写真】エッセイ『真ん中のひじ掛けの妖精』には、描き下ろしイラストも多数掲載 ――エッセイ出版のきっかけについて教えてください。 【五分目悟】経緯はシンプルです。KADOKAWAの編集者さんから「本を出しませんか?」と声をかけていただいたからです。 ――「うまく文章が書けるだろうか……」といった不安や葛藤はありましたか? 【五分目悟】それは全くないですね。動画制作のときも、毎回脚本を書いているので、そんなに文章を書くことに抵抗はありませんでした。中学時代に弁論大会で優勝していたので、無条件に自信はあるといいますか、書くことに抵抗はなかったです。 ――本を作るうえでこだわられたことはありますか? 【五分目悟】カバーイラストを人気アニメーション作家のhohobunさんにお願いしました。「もし、本を出すなら絶対hohobunさんに関わってもらいたい」と、ずっと思っていたんです。僕はけっこう、SNSをフォローしてくださった方のアカウントを見に行って、素敵な作品を発表されている方ならフォローさせていただくのですが、hohobunさんのアカウントを見たときに、その絵に一目ぼれしてしまいました。「すごいなあ」と思っていたら、その数カ月後には「葬送のフリーレン」のエンディング映像を手掛けられていたので、「先見の明があるな」と自画自賛しました(笑)。実際にお仕事をお願いする際にオンラインで打ち合わせをしたのですが、そのときにhohobunさんから「今の動画制作以前から活動されているのを見ていました」とおっしゃっていただいて、驚きました。 ――エッセイの題材はどのように見つけられたのでしょうか。 【五分目悟】動画でもそうなのですが、日常生活の中であえて目を光らせて題材を探す、ということは、ほとんどしていません。その余裕がまるでないのです(笑)。街では、殺されないように、後ろから車が突っ込んでこないようにですとか、後ろからどんな人が来ているかなど、気をつけることが多すぎて、とてもネタを探している余裕はないです。エッセイの内容は、自分の思い出を文字として残しておきたいという気持ちもあったので、実話がほとんどです。同じエピソードが動画化されていたりするので、見比べていただくと、より楽しんでいただけると思います。 ――動画クリエイターとして大活躍中の五分目さんですが、動画制作のきっかけは? 【五分目悟】絵を描くことにはじまって、アニメーション制作や声優、作曲と、やりたいことがいっぱいあって、それをひとつのことで表現できたらな、というのがきっかけですね。脚本を書いて、声優として演技をして、音楽も作って、編集作業をしてと、好きなことを全部詰め込んだら、総合芸術としての動画というスタイルにたどり着いたという感じです。 ――五分目さんの動画には、他では観ることのない個性的なビジュアルのキャラクターが多数登場しますね。 【五分目悟】単純に僕の好みなんです。以前、実写ドラマの監督もさせていただいて、その際も好みのビジュアルの俳優さんをキャスティングしていただきましたが、皆さん同じ系統の顔をしていらっしゃいました。代表的なキャラクターの大船よし子は、よく皆さんに「眉毛がない!」とご指摘を受けますが、僕は最初、そのことに全く気づいていなかったんです。彼女が登場する動画がTik Tokでバズった際のコメントが、眉毛についてばかり書かれていて、そのときに始めて「確かに片方しか眉毛がない!」と気づいたくらいなんです。 ――動画制作からはじまり、TVドラマの監督、そしてエッセイ出版と、活躍の場を広げていますが、今後の野望はなんですか? 【五分目悟】やりたいことは本当にたくさんあります。アイドルをプロデュースして作詞をしてみたいですし、本業の声優さんに動画に参加していただいたり、絵本や童話集も出版してみたいです。「推しの子」の原作者・赤坂アカさんのように、動画制作は他のクリエイターさんにおまかせして、自分は脚本に徹するスタイルにも憧れますね。 ――最後にこれから『真ん中のひじ掛けの妖精』をお読みになる方々へメッセージをお願いします。 【五分目悟】この本を読んだ人と読んでない人では、明らかに人生の深みが違うと思いますので、読んだ方は鼻高々に堂々と人生を歩み、また読んでない方は、何を間違ったのか反省しつつ、本を手にとっていただければ幸いです。……というのは冗談ですが(笑)、今までの、自分の創作物の中で、一番本気を出した作品だと思いますので、その点でもぜひ見ていただければなと思います。中学の弁論大会で優勝した人間の本気を、どうぞご覧ください! 取材・文=中村実香