宙を舞う「1500馬力」のブルドーザー モンスタージャム JCBディガトロン タイヤは1本292kg!
外形66インチのタイヤは1本292kg
多くの場合、1会場で走る時間は合計でも30分程度。スタジアムの中だから、全開走行は殆どできない。メカニックや部品は、マシン間で共有されるという。 「ストックのエンジンは沢山あります。必要なら、次のユニットへ載せ替えるので。不調があれば、すぐにドライバーが教えてくれますよ」。イースタリーが説明する。 車重は約5440kg。全長は5100mmで、全高は3200mm。これを支えるサスペンションは、前後とも4リンク式で、ストロークは30インチ(約762mm)もある。リザーバータンク付きのエアショックが、2本づつ組まれている。 タイヤは、インドのBKT社製。外形は66インチ(1676mm)あり、重さは1本292kgだ。「このタイヤは4世代目。減りが少ないので、ほぼ永遠に使えるでしょうね」 ディガトロンは、JCBとモンスタージャムとのパートナーシップで誕生した。北米市場での販路拡大の一環として、公式工業車両プロバイダーというポジションにある。テキサス州サンアントニオでは、新しい工場が建設中だ。 先述の通り、ディガトロンも管理するのはフェルド社。JCBがシャシーを設計する必要はなかった。それでも、観衆の目を引くボディは必要になる。ワトソン率いるチームが、ブルドーザーをポップにしたようなデザインを生み出した。 「マシンの見た目は、自分たちでコントロールしたいという考えが強くありました。でも、モンスタートラックのデザイン経験なんてありません。巨大なバケットや掘削機をモチーフにした、極端なアイデアも初めはありましたよ」。ワトソンが振り返る。
JCBブランドを表現するモンスタートラック
「JCBブランドを体現し、どんな企業なのかを示すトラックが必要だと考えました。多様な建設機械をデザインする時の課題は、同じブランド・ファミリーだと感じられるようにすることです」。ディガトロンも、その一員だ。 ボディは、激しいスタントに耐える必要がある。ドライバーのトリスタン・イングランド氏は、リアを持ち上げてフロントタイヤだけでバランスさせる技が得意。そのため、フロント側は小さく丸く作られている。 同時に、建設機械のアームやバケットもしっかり表現された。コンピュータ上で仮想モデルを制作し、破壊シミュレーションで耐久性も確認済みだ。 「ディガトロンは、運転席からの視界が良好。タイヤが目視できることも確かめています。視界が広がるほど、競技時の自信は高まるはずです。多くの議論を重ねましたが、素晴らしい結果で、やり甲斐があるものでした」。イースタリーが話す。 2024年8月には、ロンドン・スタジアムでモンスタージャムが開催された。もちろん、ディガトロンも参戦。JCB社の経営者トップ、ロード・バンフォード氏も観戦している。 このイベントでは、直接対決と2輪チャレンジで勝利。フリースタイルでは、バックフリップで横転してしまった。それでも最終得点で、ディガトロンが総合優勝を掴んだ。 モンスタージャムは、ふざけたモータースポーツに見えるかもしれない。だが、アメリカでは巨大なビジネスを構成している。ディガトロンが、JCB社の市場開拓を強力に推し進めることだろう。
JCBディガトロン(モンスタージャム・マシン)のスペック
英国価格:-ポンド 全長:約5100mm 全幅:約3800mm 全高:約3200mm 最高速度:112km/h 0-100km/h加速:4.0秒 燃費:-km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:5440kg パワートレイン:V型8気筒8849cc スーパーチャージャー 使用燃料:メタノール 最高出力:1500ps 最大トルク:151.8kg-m ギアボックス:2速オートマティック(四輪駆動)
ジェームス・アトウッド(執筆) 中嶋健治(翻訳)