ドレスをまとって雪山で、雨の中で…Rinatyさん「自撮り写真」にこだわる理由 写真家協会の正会員に
「撮りたい」欲求からセルフポートレートへ
Rinatyさんが写真撮影をはじめたのはいまから約10年前、高専の1年生のことでした。 入部すればテストの過去問をもらえ、焼き肉をおごってもらえるという言葉に誘われて、写真部に。 「カメラで撮影すると肉眼で見えるのとは違う世界が広がる。例えば、フラッシュを発光させて雨を撮影すると、星空のように美しく光ってみえる。それがすごくおもしろいと思って、撮影にはまりました」 さらにSNSで、後輩の友人が被写体として写っている写真を見かけたのをきっかけに、人物を被写体とするポートレートという分野に興味を持つようになりました。 自分がモデルとしてほかのアマチュアカメラマンに撮影してもらうようになり、写真展にも足を運ぶように。写真を通じた先輩や友人も増えてきました。そのかたわら、自分でも撮影技術を磨くために、自らが被写体となって練習するようになりました。 公務員試験に合格し、5年制の高専を卒業後は神戸市役所に就職しました。給料をもらって最初に買ったのは20万円のフルサイズの一眼レフカメラと、写真の確認やレタッチに欠かせないパソコンでした。 就職後も週末の休日は撮影に出かけ、平日も終業後に撮影。ますます熱が入りました。 ただ、仕事は忙しく残業もしょっちゅう。撮影したくても被写体となるモデルさんとスケジュールを調整するのが一苦労になってきました。そうしたなか、練習ではなく、自分を被写体として撮影し、作品を作ることが次第に楽しくなってきたそうです。 そこにコロナ禍が拍車をかけます。2020年度は在宅勤務が増えました。イベントや人とふれあう活動が大きく制限され、撮影したくても外で撮影できません。 自分を被写体にして、家で撮影する。撮りたいという欲求はセルフポートレートにますます向けられました。自宅の室内やベランダ、さらに祖父が残した家をスタジオに改装して――。 その時の撮影の裏側を紹介する動画をSNSにアップしたところ、「バズり」ます。その動画をきっかけにNHKのEテレ「沼にハマってきいてみた」でRinatyさんの活動が紹介されました。 これが転機となってRinatyさんは21年3月、市役所を退職。翌月からフリーランスの写真家として活動を始めました。