「脱原発をめざす首長会議」が女川原発再稼働で緊急声明
全国の市区町村長とその経験者でつくる「脱原発をめざす首長会議」は9月22日、宮城県女川町とともに東北電力女川原発の立地自治体である同県石巻市で記者会見を開き「不安な避難計画では女川原発2号機は停止したままに」と題した緊急声明を発表した。東北電力は女川原発2号機の11月の再稼働を目指しているが、原子力規制委員会で検討課題となった複合災害時での屋内退避をめぐる問題が解消されていない。緊急声明は要望書として近く政府の関係機関などに送られる。
緊急声明は冒頭で今年5月、能登半島先端に建設予定だった珠洲原発建設予定地や北陸電力志賀原発の立地状況などを視察したことに触れ「そこで強く感じたのは、能登半島地震によって起きた道路の寸断、海岸部の隆起、家屋の倒壊が相次いだことによって、半島の住民の避難や、事故時の屋内退避が極めて困難になるという、恐ろしい現実だった」と指摘。 そのうえで「能登半島地震の教訓と重なる牡鹿半島の住民の避難計画は不安を抱えたままだという。(中略)5~30キロ圏内の『緊急時防護措置準備区域(UPZ)』の住民(約18万8500人)の避難先も計画上は示されているが、その通り実施できるかは見通せない。実際に2011年の東日本大震災で牡鹿半島の道路はすべて寸断されて通行不能であった。この事実を決して忘れてはならない」と強調したうえで、最後にこう求めた。 「牡鹿半島の住民らが不安を感じる避難計画しかできていない現状では国、宮城県、関係自治体、東北電力がやるべきことは、住民の安全を守るために女川原発2号機を停止したままにすることである」
異常な違和感
緊急声明の発表前には、学習会として「女川原発の再稼働を許さない! みやぎアクション」世話人の多々良哲氏が女川原発2号機の再稼働がかかえる問題について冒頭で「3・11大震災で被災した原発、なおかつ事故を起こした(東京電力)福島原発と同じ沸騰水型原発(BWR)が動かされようとしている」と説明。そのうえで「岸田政権が『原発回帰』に舵を切り、目下の焦点となっているのが、東日本のどこかでBWRを再稼働させることであり、女川原発2号機がその突破口と位置付けられている」との認識を示した。 さらに「脱原発をめざす県議の会」副会長の三浦一敏・宮城県議が、再稼働に伴って東北電力が使用済み核燃料を保管する「乾式貯蔵施設」を原発敷地内に新設しようとしている状況を紹介した。 首長会議の会員であり、UPZ内にある美里町の相澤清一町長は「美里町も(東京電力福島原発事故から)13年になりますが、いまだ農林業系汚染廃棄物の処理が終わりませんし、課題もあります。(中略)原子力規制委員会は“安全は語るが安心は語らない”との見解を示しており、私はこのことに異常な違和感を覚えます」とのメッセージを伝えた。 今回の学習会・記者会見に参加した村上達也・元茨城県東海村長らメンバー10人は翌23日には、多々良氏と「みやぎアクション」世話人の篠原弘典氏とともに現地を視察。女川原発の構内には入れなかったものの、牡鹿半島の中央部で海岸沿いに立地している状況を確認した。 東北電力側は「女川原子力PRセンター」でスタッフが説明し、東日本大震災では「『止める』『冷やす』『閉じ込める』が機能し、安全に停止した」ことなどを強調した。ただ、その一方、首長会議メンバーが「基準地震動を580ガルから1000ガルに引き上げた理由は?」と質問しても、回答は得られなかった。
佐藤和雄・「脱原発をめざす首長会議」事務局長