公立小中学校の1人1台端末の更新、共同調達で準備に差「供給格差」の可能性 2025年度に集中、円安による価格高騰に懸念
調達方針を決めている市区町村ではChromeOSの比率が高い
GIGA第2期では、予備機も含めると全体で1000万台強の端末が調達されると想定されるが、現段階で調達方針を決めている市区町村ではChromeOSの比率が高い状況にある。 その理由としては、本体と周辺機器や端末管理ソフト(MDM)を補助金額である5.5万円以内に収めることを念頭に置くと、クラウドと処理を分散することで端末価格を比較的安価に抑えやすいChromebookを選択しやすいからだろう。 MM総研は、「Windowsパソコンは、個人市場での平均出荷単価が10万円を超え、AI(人工知能)活用への対応でさらに平均単価は上昇する見通し。また切り替えの要因として、『前回導入のWindowsパソコンの起動に時間がかかる』『OS更新に時間や手間がかかる』など予算内で調達できる端末のハード性能や運用面について教育委員会から課題があげられており、解決策の丁寧な説明が必要だろう。iPadも最新機種、周辺機器ともに値上がり傾向にあり、MDMを含めた調達価格を複数年にわたり予算内に収めていけるのかが懸念される」と分析している。 今回は、共同調達により、端末の更新を一括で行うことでコストの削減や業務効率化が期待されているが、課題もあるとMM総研・取締役研究部長の中村成希氏は指摘する。 「市区町村の『事務手続きの軽減』『仕様書に沿った端末やソリューションの調達』などで、政府が狙った共同調達方式に一定の成果を出すことができそうだ。しかし、都道府県ごとに調達の準備状況にばらつきが出ており、市区町村からは懸念の声も上がっている。調達の大型化は、価格低減の可能性がある一方で、納入者にも規模の論理が働きやすく、全国規模のIT販売店や通信事業者など大手サプライヤーに絞られる可能性も高い。 前回調達で製品を納入した地場の販売店が実質的に市場に参入できなくなることで、納品場所(学校)や時期が分散するGIGAスクール市場では、地域によって導入支援や運用サポートが不足するなど『供給格差』が出る恐れもある。例えば、コンソーシアム方式での入札を認めたり、地域単位での入札など地域販売店も参入できたりするように実情に即した運用が必要だろう。共同調達を主導する都道府県担当者にとっては初めての大規模調達であり経験不足も懸念される。政府には共同調達の現状把握と円滑化に引き続き支援が求められる」 課題は価格や入札にとどまらないだろう。端末を共同で調達するとなると、端末の活用方法や授業での使い方、またその後の保守・管理までを市区町村全体で検討したうえで選定する必要がある。 単なる端末の選定にならぬよう、GIGAスクール構想がスタートして以降の3年について、どのように活用してきたのか、どんな課題があったのかを振り返り、しっかりと次につなげる機会としたいところだ。 (注記のない写真:Graphs / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部