2025年は「科学にとって新時代の幕開け」注目の人は? Newton編集部長が解説
あと一人、クリスティーナ・コックさんは米国の女性飛行士です。今NASA(米航空宇宙局)は人類が再び月面着陸を目指す「アルテミス計画」を進め、26年に飛行士4人の打ち上げを予定しています。その一人として女性で初めて月を周回するのがクリスティーナさん。宇宙分野でも女性が活躍するという意味でも、象徴的な人です。 紹介する10人に共通するのは、それぞれの科学分野で、人類が共通に恩恵を受け社会全体がよくなっていくための研究や発明を行っていること。 大阪大学教授の林克彦さんは、生命科学の分野で紹介したい一人です。23年に、雄のマウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から卵子をつくり、別のマウスの精子と受精させ子どもを誕生させることに成功しました。倫理的な議論はこれから進んでいくと思いますが、この技術を使えば、絶滅の危機に瀕している種を救うことなどに役立つと期待されています。 25年はミクロの世界で働く物理学の理論である「量子力学」の誕生から100周年の記念の年です。この分野では、東京大学教授の古澤明さんに注目しています。24年11月に、「光量子コンピューター」の開発に成功しました。量子コンピューターは、量子力学を応用した次世代コンピューター。現在のスーパーコンピューターで何万年かかっても解けないような問題を簡単に解き、実用化されれば社会を大きく変えると言われています。その新方式である光量子コンピューターは情報の単位として光を用いるため、より高速かつ大規模に計算でき、量子コンピューターの実用化を早めると期待されています。25年はAIがさらに高性能化し、その延長線上には、AIが人間の知能を超える「シンギュラリティー」にますます近づいていくのかもしれません。 (構成/編集部・野村昌二) ※AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号
野村昌二