【40代、50代・上手に怒ってストレス減!】「カスハラ」や「老害」予備軍は40代から増えてくる!
店舗やレストラン、企業などに度を越したクレームをつけることを「カスハラ(カスタマーハラスメント)」と言い、話題に上ることが増えてきた。また年配者からの若者に対するハラスメントを「老害」と呼ぶことも。これらはどうして起こるのだろうか? 一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介さんに伺った。
カスハラの8割が40代~60代
店舗やレストランなどで、「接客がなってない!」「いつまで待たすんだ!」などと感情的に怒鳴り散らしている人を時々見かける。 「もちろん正当な理由でクレームを言うことは悪いことではありません。しかし、理不尽なクレームや度を越した要求をする行為は、カスタマー(顧客、消費者、利用者など)によるハラスメント=カスタマーハラスメント(カスハラ)として、近年社会問題になっています」(安藤さん) 暴言や暴力を伴い、威力業務妨害が成立すると犯罪になるので注意が必要だ。 「カスハラを起こす年代は40代~60代が約8割を占め、特に男性に多い傾向です。企業などで自分の価値観やルールを部下に押しつけるモラハラ(モラルハラスメント)が増えてくるのも40歳頃から。男性に多い傾向ですが、女性にもそれに準じる人はいるでしょう」 こうした現象を近年では「老害」と表現することも。まさに40代は「カスハラ」「老害」予備軍になっている可能性があるのだ。
老害になる人の3つの特徴
「こうしたカスハラや老害と言われる人には3つの特徴があります。それは『孤独である』『執着するものが多い』『自己顕示欲が強い』です。この中のひとつが当てはまる場合もあれば、複数該当する人もいます」 それではその裏にある感情を見ていこう。 【1】孤独である 「もともと、人間関係をつくるのが苦手なので孤独なのですが、心の奥ではやはり誰かとかかわりを持ちたいのです。そのため、いちいち人のことに口を出したり、小さなことにクレームをつけたりします。いわば『かまってちゃん』なのです」 【2】執着するものが多い 「『~すべき』『~はず』『普通』『常識』『当たり前』といった言葉に象徴されるように、『こうあるべきと執着するもの』が多い人も、カスハラ・老害になりがちです。 『順番は守るべき』『普通、こんなに待たされない』『最近の若い者は常識がわかってない』『私はお客なのだから、丁寧に扱われるのは当たり前』。こうした自分の価値観や欲求が裏切られたときに怒りが生まれます。これがクレームの言動となるわけです。 この譲れない『自分の価値観・正しいこと』の範囲が狭いと、裏切られる頻度や怒りの度合いが高くなるため、カスハラ・老害の行動に出やすくなります。 最近は働き方の変化やデジタル化などにより、従業員に新しい知識やスキルを再習得させる『リスキリング』を行う企業が増えています。 人事担当者と話をしていると、このような場面では中高年の多くが抵抗感を示すようで、実践してもらうのにとても苦労するそうです。今まで培った自分のスキルや価値観が通じないことにいら立つのでしょう」 40歳を過ぎた頃から、執着するものを見直して、新しいものを積極的に吸収する姿勢を培うことが大切なようだ。 【3】自己顕示欲が強い 「自己顕示欲は、自分を目立たせて周囲の人から注目されたい、認められたい、褒められたいという欲求のことです。承認欲求ともいえます。 孤独を感じている人は、人とかかわりたくて、さまざまなことに口を挟みがちです。そんなとき、よくあるのが『それは違う』『本当はこうなんだ』『教えてあげるよ』といった具合に、相手を否定したり、自分の持っている知識や経験、価値観を披露して、自分の優位性を示そうとします。自分の話ばかりする傾向もあります。 自己顕示欲の強い人は、実は仕事やプライベートが順調でなかったり、理想と現実にギャップがある場合が多いようです。つまり自分に自信が持てないことの裏返しとも言えるのです」 その場を盛り上げようと、つい昔の武勇伝を話したり、知識を披露している人は注意が必要。カスハラ・老害予備軍になっているかも!? 40歳を過ぎたら、一度、価値観や自分の言動を見直してみるといいかもしれない。 【教えてくれたのは】 安藤俊介さん アンガーマネジメントコンサルタント。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。新潟産業大学客員教授。怒りの感情と上手に付き合う理論と技術をアメリカから導入。教育現場から企業まで幅広く講演、研修、セミナー、コーチングなどを行う。ナショナルアンガーマネジメント協会では世界で15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルの唯一のアジア人。『[図解]アンガーマネジメント超入門 怒りが消える心のトレーニング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。 イラスト/カケハタリョウ 取材・原文/山村浩子