【#佐藤優のシン世界地図探索58】イランの「対日態度激変」から見える未来世界
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――最近、イランのラジオ兼ウエブサイト「Pars Today」で、『なぜ日本政府は米・イスラエルを恐れるのか? 偉大でも圧力にさらされる国民』との論評が出ました。佐藤さんもコラムで触れていましたが、イランはなぜ、日本に対する態度を変えたのですか? 佐藤 米国が弱ってきたので、イランは今まで言いたかったことを言い始めたんですよ。 米国との関係からも、日本とはつながっておかないといけない局面がありました。そのため、どんなことがあっても"友達"という形をとっていましたが、今までのゲームにルール変更が起きたわけです。 「やられたらやり返す」が相互主義の外交の基本ですが、イラン国内では今までは、イスラエルにやられたことに関して反撃は出来ませんでした。なぜならば、イスラエルと米国が強いからです。しかし、昨今では反撃出来るようになりましたよね? ――そりゃもう、イランはイスラエルに無人機・巡航ミサイル、弾頭ミサイル計300発以上を滅多撃ちでございます。 佐藤 それに合わせて、これまでは米国に対する配慮から言わなかったことを、日本にも言うようになったのです。 ――イスラエルには無人機と各種ミサイルが、日本には言論が飛来したわけですね。 佐藤 だから、全ての物語を貫くポイントは、米国が弱くなっているということなんですよ。 ――なるほど。 佐藤 そして、今回のイランとイスラエルの話は大した話ではありません。お互いに「軍事目標主義」で、ゲームのルールを確立しているからです。要するに両国がやっているのは、堅気には迷惑を掛けず、組員の中だけでやる暴力団同士の抗争です。 ――なるほど! 「ええか、チャカを弾(はじ)いても、組員と組事務所以外の一般の堅気の方々に当てたらアカンで」という喧嘩をしているんですね。 佐藤 その世界でやっている"仁義ある戦い"なので、民間人を巻き添えにせず、決められた範囲でやっています。 ――「仁義なき戦い」ではないと。 佐藤 そうです。堅気の方々には影響がありません。だから、大した話じゃないということです。大戦争というのは堅気の人たちも巻き込むことですからね。その辺りの理解が日本のメディアは本当に弱いんですよ。 ――ゲームのルールに従って、ゲームをやっているだけと。 佐藤 その通りです。そして、今まで歪んでいたゲームが本来のゲームに戻ったのは、米国が弱くなったことが背景となります。 ――ということは、暴力団抗争の回路で考えると、極東、東アジアにおいても、シマの線引き、すなわち縄張りの縄の張ってある範囲が変わるのですか?