「声を失っても、できる何かがある」 つんく♂さんが語る近畿大“ド派手”入学式
「オレにもまだやるべきことがある」
――つんく♂さんは2015年の入学式の祝辞の中で、喉頭がんの手術で声帯を摘出し、声を失ったことを公表し、大変な話題になりました。 14年秋に手術したばかりだったので、入学式に登壇できるかどうかもわかりませんでした。心身ともに憔悴(しょうすい)しきっていたし、声を失って気持ちも落ち込んでいました。そんな僕に近畿大学は「今年もプロデュースをお願いします」と言ってくれたんです。うれしかったですよ。「オレにもまだやるべきことがあるんだ」と背中を押してもらえた。セカンドチャンスをいただいた気持ちになって、すごく励まされましたね。次は僕が背中を押す番だと、自分自身の転機にもなりました。 ――あの祝辞は感動的でした。つんく♂さんの言葉に心を打たれた人はたくさんいたと思います。 声を失ったことはそれまで公表していなかったし、そもそも体調が回復して舞台に上がれるかどうかもわからなかった。だからギリギリまで準備もせず、そのとき思っていた言葉を、何のてらいもなく素直に伝えたんです。 ――「私も声を失って歩き始めたばかりの1回生」という言葉が印象的でした。 祝辞では、僕もみんなと一緒に歩いていくという気持ちを伝えられたらいいな、と思いました。近畿大学ってつながりが強いんですよ。卒業生のせいや(霜降り明星)やナダル(コロコロチキチキペッパーズ)、五輪競泳メダリストの寺川綾さんなども、入学式を一緒に盛り上げませんか?と呼びかけると、快く協力してくれました。しかも、こちらの期待以上のことを、愛を込めてやってくれる。心が洗われる感じがします。もちろん、どこの大学もそうだと思いますが、母校愛っていいですよね。 ――新型コロナウイルスの影響があったときは、どうしていたのですか。 少しでも思い出に残るようなスタイルを考えて、20年はオンラインで、「サイバー入学式」という形式にしました。以降は工夫を凝らしながら続けてきましたが、今年ようやく4年ぶりに、制限のない状態でプロデュースできました。 ――“ド派手”入学式は、23年に復活しました。以前は女子学生が「KINDAI GIRLS」としてパフォーマンスしていましたが、23年から「KINDAI WELCOMES」と名称を変えて、男子も参加しているのですね。いまの時代を反映しているのですか。 実はここ数年、募集の段階で「僕たちも参加したい」という男子学生の声が聞こえてきたんです。つんく♂といえばガールズグループのイメージがあるとは思うんですが、近畿大学は共学の大学だし、男子のほうが多いわけだし、男子がいて当然よね、ということで始まりました。男子が加わって舞台が力強く、より「お祭り感」が出るようになったと思います。 ――近畿大学の入学式は、新入生だけでなく、在学生にとっても貴重な経験ですね。 「KINDAI WELCOMES」だけでなく、吹奏楽部も応援部も参加してくれます。エネルギーを凝縮させて爆発させる、最高の時間です。たった1日のことだけれど、参加した学生は一生忘れられないと思います。