「声を失っても、できる何かがある」 つんく♂さんが語る近畿大“ド派手”入学式
総合エンターテインメントプロデューサーとして、モーニング娘。など人気アーティストを世に送り出したつんく♂さん。2014年からは、自身の母校・近畿大学の入学式をプロデュースしています。15年には祝辞の中で、喉頭がんの手術で声を失ったことを公表し、話題になりました。つんく♂さんが大学の入学式に込める思いとは何かを聞きました。 【写真】2023年の入学式でオリジナル曲を披露したつんく♂さん
――近畿大学の最近の入学式を動画で見ました。ものすごく華やかで、自分が新入生だったら「近畿大学に入学してよかった」と感激すると思います。どうしてこのような入学式をつくり上げようと考えたのですか。 僕が近畿大学に入学したのは37年前ですが、入学式の記憶ってぼんやりというか、これ!というような何かをしっかり覚えてないんですよね。もしかすると、それは僕だけじゃないように思います。時代背景もあるでしょうが、近畿大学だけの話でもないとも思うんですね。入学式って大学生活の一場面にすぎないというか、どっちかというと面倒くさいものの一つというか(笑)。一般的には慣習というか、前例踏襲の空気があるじゃないですか。でも、近畿大学は「入学式を変えよう」と考えたんだと思います。実はなかなかの盲点だったって僕も思います。 おそらく、それまで入学式における新入生の気持ち(趣)はバラバラだったはず。頑張って勉強して近畿大学にたどりついた人もいれば、第1志望の大学に入れず、悔しい気持ちを引きずって入学する人もいるはずです。そのバラバラな気持ちを、同じ地点まで引っ張り上げる機会が入学式だと。 入学式で「この大学なら大丈夫」っていう安心感や期待感を持たせたい、「近畿大学を選んだのは間違いではない」と思えるよう背中を押したいという大学の考えに、僕も共感しました。 ――確かにどこの大学でも第1志望で入学できる学生は、ひと握りです。いまおっしゃった問題はどの大学にも共通することですが、ほとんどの大学の入学式では全員に向かって「おめでとう」を言うだけですね。 近畿大学の入学式は、 僕が入学した頃とは、時代も出生率も違うし、比較にはならないけど、おそらく大学側が入学式に込める愛の方向が違うんだと思います。そんな愛情の一つとして、闘病中の僕に「プロデュースをお願いします」と言ってくれたのだと思うし、その愛情に応えたいと思えたから、僕も入学式で自分の正直な思いを伝えることができたように思います。