「RMK」や「スリー」の立役者、石橋寧が化粧品業界に提言 Vol.5(最終回) 「化粧品のサステナビリティ問題」
――:いよいよ最終回ということで、やはり「スリー(THREE)」を立ち上げられた石橋さんにはサステナビリティについてお伺いしたいと思います。 【画像】「RMK」や「スリー」の立役者、石橋寧が化粧品業界に提言 Vol.5(最終回) 「化粧品のサステナビリティ問題」
石橋寧(以下、石橋):化粧品でサステナビリティっていうとすごく難しさがあるんだけれど、人類が地球上に誕生して約700万年と言われているんですよね。それで産業革命が起きてまだ200年余り。ということは、人類は長らく自然由来のものに頼って生きてきたわけです。植物、動物、魚介など自然の恵みを食して生きてきた。ところが産業革命が起こり、その後エネルギー革命が起こって石油化学技術が発達しました。歴史的に見れば世の中が一瞬にしてすごく便利になり、治らない病気も治るようになって長生きするようになっているわけだけど、本質的には700万年に対しての200年程度でしかないから、化学物質に対する免疫ができていないわけです。例えば頭痛がして薬を飲むとすぐ治るけれど、それはピンポイントであってそれ以外の効果はないし、飲み続けるのも良くない。ところが漢方薬や生薬は、即効性はないけれども体全体に行き渡らせることができる。それが何千年と続いているわけです。SARSとかコロナウイルス感染症とかアトピー性皮膚炎とか、カタカナ表記の疾患は産業革命以降に誕生したもので人類には免疫がなく、漢字やひらがなで表記される疾患には本来の免疫システムが作用する、というのが大前提としてある。そんな考え方で「スリー」にも「イトリン(ITRIM)」にも自然素材を原料に採用したというのがあります。
――:どちらのブランドも国産原料に徹底してこだわっていましたね。
石橋:「スリー」でキー成分に使っているティーシードオイルは、静岡県の牧之原産の茶の実から抽出したオイルで、これは本来使われずに捨てられていたものを初めて化粧品の原料に採用したんですね。しかもこのティーシードオイルはヒトの皮脂の組成に近いという特性があり、ほとんどの商品に配合しています。一方、2023年に販売終了した「イトリン」では夕張メロンの種子油やビワの葉のエキスをキー成分に使っていましたね。ビワの葉は昔から生薬として使われていたように、日本人は古来、ヘチマ水や米ぬかなど自然素材を化粧品原料として使ってきたという長い歴史があります。だからその知恵を生かしたかったわけです。また「スリー」ではガラスボトルを基本としていましたが、それは“化粧品の品格”。一般的にはプレミアムなコスメでも樹脂を使うことが多いけれど、僕に言わせればそれは高級品ではなく高額品。樹脂を使えば安く大量に生産できるけれども、使い終わればリサイクルできず、ただのゴミ。ガラスボトルだったら一輪挿しにもできるくらいの見栄えの良さがある。少し前に空容器を回収するという動きが活発だったけれど、結局今も続いているの?という感じですよね。美しさと持続可能性の両立は、現代のひとつの答えだと思います。