良心的な保険会社はT&Dとライフネット生命 ベストは都道府県民共済グループ
前回、某外資系生保を「顧客本位の生保会社ランキング」のベスト1とした週刊ビジネス誌の特集に、違和感を覚えたことを書いた。外貨建て保険や変額保険を、老後資金や教育資金などを準備する手段として勧める会社を「顧客本位の生保会社」とは呼べないと、筆者は考える。 そこで今回は、筆者が相対的にマシだと感じている生保会社2社に、ベスト1を加えた、個人的な「生保ランキング」をご紹介する。 ランキングに入る前に、評価基準を示しておこう。 とにかく「お金の流れがわかりやすいこと」だ。 ●「運営側の取り分」を開示するのが、いい生保 外貨建て保険や変額保険が「マズイ」と思うのは、貯蓄を目的とした人にも販売されているのに、手数料等が開示されておらず、「貯蓄に回らないお金」がどれくらいあるのかがわからないからだ。 そんなわけで、筆者のランキングでは、お金の流れに関する情報発信(情報開示)があるかどうかを重視した。具体的には、加入者が支払った保険料のうち、どれくらいが「運営側の取り分」となり、「加入者側への給付」に回るお金の割合はどのくらいか、といった情報だ。各社とも、商品設計の際に見込みの数字を出しているはずだし、手数料率は確定しているのだから、これらを開示するのが親切だと考える。 第3位はライフネット生命(*1)だ。
同社は、ホームページで商品別に「保険料の内訳」を例示している。 定期死亡保険「かぞくへの保険」で、保険料の内訳を見てみよう。 30歳男性が、死亡時に1000万円の保険金を遺族に残す場合(=給付金が1000万円の場合)、保険料は1068円。そのうち、保険金(給付金)の支払いに使われる「純保険料」が667円、会社側の経費や利益になる「付加保険料」が401円となっている。 つまり、保険料の38%が、ライフネット生命の経費や利益になる見込みなのだ。 ただし、「付加保険料が少ない=良心的」とも言い切れない。なぜなら、あらかじめ純保険料を高めに見込んでおけば、付加保険料の割合は下がるからだ。 それでも「60万円ほどのお金を用意するのに、100万円近いお金を払うらしい」とわかるのだから、貴重な情報には違いない。 第2位は、T&Dフィナンシャル生命(*2)だ。 *1 正式な社名はライフネット生命保険株式会社 *2 正式な社名はT&Dフィナンシャル生命保険株式会社 ●コストが高くても、開示しないよりはマシ T&Dフィナンシャル生命は、金融機関や来店型保険ショップ等を通じた保険販売に特化している会社だが、諸費用の開示が進んでいるほうだと認識している。 例えば、同社サイトで、変額保険の「つみたて果実」(災害加算・Ⅰ型)の商品概要を見てみよう。「諸費用について」という項目があり、「契約の締結等に必要な費用」が、年率 0.31%~2.40%かかることがわかる。「運用に関する費用」の記載もある。これは、主な投資対象となる投資信託の信託報酬であるが、年率0.275%~0.517%となっている。 この2つだけでも、「つみたて果実」の諸費用は0.585~2.917%である。新NISA(少額投資非課税制度)で人気の投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の信託報酬は、0.05775%だ。これらの数字を確認するだけでも、「運用目的で変額保険を利用するのは痛い」とわかるだろう。 「つみたて果実」では、特約等を付加するとさらに費用がかかる。 ただし、ほとんどの生保会社は、変額保険の諸費用をT&Dフィナンシャル生命ほど具体的には開示していない。例えば「保険関係費(契約締結・維持などに必要な費用)の総額は、被保険者の年齢、性別などにより異なるため、具体的な金額や上限額を表示することができません」といった説明をしている会社が少なくない。費用が最も高額になる例を示すだけでも、顧客の判断を助けることになるはずだから、つくづく不親切だと感じる。