ドラッグ中毒、紛争、イスラム国…危険な場所や組織への取材、TBS須賀川記者が「それでも撮りたいもの」
「危なくないの?」と聞かれるが…
――取材で危険な地域にも入っていますよね。どのようにリスク管理していますか? いやー、どうなんですかね。当然、僕が取材で入るような現場は、渋谷のスクランブル交差点を歩いてるかよりかは、危険だとは思うんですけれども。実は僕は、「怖い」「危ない」って思うときは取材しちゃダメだってことにしていて。 ある程度、自分の中で線引きをしているんですけど、「怖い」「危ない」って思う時って、本当は危なくないかもしれないんですよ。 どういうことかって言うと、「実際に危険が迫っている」と「『怖い』『危ない』と思う」って別なんですよね。 わかりやすい例では、動物園に行ったときに、檻の向こうにライオンがいたら、大人は「怖い」「危ない」とは思わないじゃないですか。檻があって安全だと思っているから。 でも、子どもは怖いんですよね。だってライオンがいるから。そこで何が起きるかって言うと、判断を誤るんですよ。怖がって後ずさりしてつまずき、頭に大けがをするかもしれない。「怖い」「危ない」って思うときって、つまり情報がないときなんですよ。 で、そういうときって、子どもと同じで、やっぱり危ないんですよね。無理する可能性があるので、そういう現場はやっぱり回避しなきゃいけないと。 だから、逆に準備ができていて、ある程度は想定できてると、実はそんなに怖くも危なくもない。 ――大事なことは何になりますか? 必要なのは、やっぱり情報。知識と経験、あと準備ですね、自分の中のシュミレーションというか。 僕は妄想癖がすごいんですよ。常にめちゃくちゃ妄想しちゃう。「こうなったらどうなるかな」「じゃあ、こうなったらどうなるかな」って。 ――「妄想」も、悪い方に妄想していくのであれば、リスク管理ですよね。 まあ、そうです。まず、取材の撮れ高に関しては、もうマックス妄想してるんですよね。これも撮れるかもしんない、こうやったらあれも撮れるかもしんない。 一方で、「あ、でもこれ危ないな」「こんなこと起きたらどうしよう」というのもダブルで妄想しているので、そうすると頭の中でシュミレーションができる。 よく「大丈夫だったの?」って聞かれるのが、アフガニスタンで薬物中毒者たちが集まっている橋の下のレポートなんですけど。 まず、あそこで使われてたのは基本的にヘロインなど、アッパー系じゃなくてダウナー系の薬物なんですよ。みんな、あんまり意識がないし、栄養状態も極めて悪い。で、たまにタリバンの摘発が入って、ひどい目に遭わされるわけです。 そこを取材しようとする僕らは、海外のメディア。海外のメディアって、タリバンは守るんですよね。何かあったら国際社会の目が向きやすいから。 タリバンが許可して、あの国で取材できている以上、タリバンとしては、我々を守る義務があると、少なくとも彼らは思ってるんです。我々は別に守ってほしいと思ってないですけど。 だから、あのあたりはタリバンが定期的にパトロールしてる。こういう情報があると、「この人たちは手を出してこないだろうな」っていう想定ができるんですよ。