名古屋ポーカー店店長の自殺は「パワハラと過重労働が原因」と遺族が提訴 店側は「失恋のショック」と反論 遺品には「身の毛もよだつ暴行動画」が残されていた
通夜の時から店に不信感を持っていた
そもそも店への疑念は葬儀の時からあったという。父が代わって語る。 「通夜に店の関係者が誰もやってこないのです。唯一A氏だけがやってきましたが、もう葬儀が終わった頃合いで、遥樹の遺影に手も合わさずに長男と長女とだけ話して帰って行きました」 応対した兄はこう語る。 「カジュアルなジャンパーを羽織り、ズボンにはジャラジャラ金属のチェーンのようなものをぶら下げていたのを覚えています。しかも、手を合わせにやってきたわけではなく、店のロッカーにあったスーツなどの遥樹の私物をどっさり袋に入れて持ってきた。非常識な態度に頭にきましたが、その気持ちを抑えながら遥樹に何があったのか聞きました」 そこでA氏は、遥樹さんが店の関係者であるB子さんに失恋してずっと思い悩んでいたと説明したという。 「『このようなことになってB子も傷ついているし、責めないで欲しい』と話しました。彼女のショックも考えて、一部をのぞき店の関係者には遥樹さんの死を内密にしているとも。私はその時点で暴行動画を見ていたのですが、A氏の方から『B子さんに夢中になっていて仕事が疎かになっている遥樹さんを叱るため、私も一度彼を殴ったことがあります』と打ち明けてきました」(兄) だがこうしたA氏の説明も、遺族の目には店で起きていた遥樹さんの「死因」を隠蔽しているようにしか映らなかった。そして父母は、遥樹さんの死が店の責任にあると訴え、21年4月、名古屋東労働基準監督署に労災申請を行ったのである。
労基署の判断
だが、同年10月に出た結果は「不支給」だった。その後父母は処分の取り消しを求めて審査請求、さらに再審査請求まで行ったが結果が覆ることはなかった。 「パワハラについて労基からは『確認できるのは1日のみの暴行で反復・継続している証拠はない』と低く見積もられてしまった」(母) 時間外労働についても、遺族側は自殺直前の30日間で少なくとも約95時間あったと主張したが、30時間程度しか認められなかった。 「店にその時間にいたからといって業務に携わっていたとは限らないという判断をされてしまいました。一緒に勤務していた従業員は全て店側に味方し、労基の調べに対して店側に都合の良いことしか話さなかったのです。こちらは元店長2人に証言してもらいましたが、2人とも直近の勤務実態まで証言できる立場ではなかったので相手にしてもらえなかった」(母) 納得のいかなかった父母は、ならば法廷で白黒つけようと、処分の取り消し訴訟を起こすとともに店の運営会社ならびにA氏を訴えるに至ったのである。