「とりあえず早く車出せ!」「チンタラ走ってんな」タクシードライバーを苦しめる「カスハラ客」へ業界が始めた「対策」
タクシー業界が進める「カスハラ対策」
一時はタクシードライバー不足が懸念されていたが、東京都内ではライドシェアの手を借りずともタクシードライバーの増加に伴い、タクシー不足は解消しつつある。 ただ、タクシードライバーになったはいいが、タクシー業界の水に慣れるまでは色々と大変である。入社してもすぐに退職する人もおり、3か月未満の退職理由は3分の2がカスハラが原因とも言われている。せっかく確保した人材を守るためにもカスハラ対策が急務であった。 タクシー業界最大手の日本交通は、以下のカスハラのガイドラインを示している。 ---------- 対象となる行為(カスタマーハラスメントの具体例) ---------- (1)要求「内容」が不当な例 ・高額な慰謝料や迷惑料の要求 ・正当理由のない返金要求、代替輸送要求 ・責任者(社長、所長)や上長による謝罪の要求 ・土下座の要求 (2)要求「手段・態様」が不当なものの例 ・怒鳴る、乱暴な口調 ・脅迫的言動、暴力的言動 ・長時間の電話、連日の電話 ・車両や会社への長時間の居座り ・「役所やマスコミに通報する」との主張 ・「写真や動画をインターネットに載せる」との主張 ・安全運行を妨害する行為 (※日本交通株式会社「カスタマーハラスメントへの対応に関する基本方針」から一部抜粋) 写真撮影され、SNSで会社名や名前を晒されることを防ぐために、乗務員証の写真と名前の提示をとりやめた。また、接客の際のカスハラ防止策として、ルートの確認などドライバーに徹底するように伝えている。 しかし、タクシーに乗ってくるなり「とりあえず行って」や「まっすぐ」しか言わない乗客や、ルートを確認しても、「まかせる」と言っておきながら、「何でそのルートなんだ!」と怒りだす乗客などの対応に手を焼いている。 このようなカスハラに発展する恐れのある行為に対してはまだ不十分に感じる。しかし、カスハラ客に対しての指針を示したことで、上記に示した行為をした客に対しては、堂々と乗車を拒否できるのは大きい。 * * * 本稿では、業界がようやく重い腰をあげて示した「カスハラ客」対策について見てきた。 そんなカスハラ客の「実像」は一体どうなっているのか。後編〈現役タクシードライバーが明かす「カスハラ客」に遭遇しやすい「意外な場所」と「時間帯」〉で、筆者の経験をもとに、カスハラ客に遭遇しやすい「場所」「時間帯」を明かすとともに、なぜカスハラが減らないのかを考えていく。
二階堂 運人(物流ライター)