<ネタバレあり>音声ガイド制作者が見た「本心」 田中裕子さんの涙に考えた〝心〟というもの
「心」はあるのだろうか?
音声ガイド制作の際、どうしても小さな画面で見ているので(という言い訳ですが)、映像の見落としがあったりするのですが、それを防ぐためにも、伴走してくれるサブ制作者がいます。その方に指摘されて、その重要さに慌てて書き直したのが、ラストの母の涙です。 野崎のところで出会うVF、綾野剛演じる中尾に、朔也は「心はあるんでしょうか?」と質問をしました。それに対して、中尾があっさりと「ありません」と答えます。そうだよなーと納得しながらも、そもそも人間の「心」というもの自体が曖昧なもの。身体のパーツでもなければ、臓器でもない。どうやって出来上がっているのかの曖昧さを考えたら、AIに心がないと言い切るのは難しいのかも、と思いました。それが、ラストの母のこぼす涙に表れていた気がします。 拾いきれていなかった分、通し試写でスクリーンで拝見して、演じていらっしゃる田中裕子さんのお芝居の素晴らしさに身震いするようなシーンでした。音声ガイドもちゃんと修正してありますので、皆さんがどう感じられるか聞いてみたいです。 この作品を見る前は、VFがあればリッチな暮らしができるという漠然としたイメージを持っていました。なので、朔也のようなタイプにはうまくハンドルできないのでは?と思っていましたし、朔也自身もVFを作ったことを多少なりとも後悔しているような節が見られました。けれど、最終的には作ったからこそ得るものがあったので、良かったなと思えました。私自身は、音声ガイド制作中、もし、VF作っていいよとなったら誰のを作ろうかな、という思考で、電車の中などの空き時間を楽しめたので、見終わった方たちにも聞いてみたいです。
音声ガイド制作者 松田高加子