北の湖を倒した「がぶり寄り」、けがから再起し大関昇進への原動力に…元大関琴風の「演歌と土俵」
自分には「休む我慢」が欠けていた
本場所に再起した79年7月の名古屋場所は幕下30枚目だった。ほぼ半年ぶりの土俵でファンが叫んだ「もう一度頑張れ!」という声援に胸が熱くなった。力士にとって何よりの良薬は白星。初戦に勝つと体中に力が湧いてくるのが分かった。この場所は6勝1敗とし、9月の秋場所は7戦全勝で幕下優勝。十両に復帰した11月の九州場所も14勝1敗で優勝した。一歩ずつ、復活の手応えを感じながら、80年1月の初場所でついに再入幕を果たした。
14歳で入門後、18歳で新十両、19歳で新入幕、20歳で新三役とがむしゃらに走ってきた。無理に無理を重ね、たまりにたまった負担が膝の中ではじけた。けがを克服する過程で、無理することと我慢することの違いを学んだ。自分には「休む我慢」が欠けていたと知る。この時22歳。琴風は1年半の経験を「輝かしい青春から大人へ脱皮する大きな試練」と書き残した。
力士として初めての入院生活が始まった時、稽古場にたびたび訪れる年配の男性が電話をくれた。人生観を変えた励ましの言葉は今も忘れないそうだ。
雨が降れば 傘を差せばいいのですよ
「琴風浩一」でNHK解説出演
NHK大相撲中継の専属解説者に決まった元大関琴風の中山浩一さんは、今後、正面解説席に座り、しこ名を使った「琴風浩一」で幕内取組に出演する。福岡国際センターで開催される九州場所初日の10日は、元小結の舞の海秀平さん(56)が向正面席で対応した。
琴風豪規
ことかぜ・こうき 1957年、津市栄町生まれ。中学2年の71年4月、元横綱琴桜(当時大関)に弟子入りし、同年7月、佐渡ヶ嶽部屋から初土俵を踏む。1メートル84、173キロ。大関在位は22場所、優勝2度。