どうするセのDH起用 交流戦のセ・パの格差をどう克服するか
添付した表を見てほしいが、昨年の交流戦でDHを任されたセの選手の実に9人が、引退、退団、移籍などで今季はもう元の所属チームからいなくなっている。セは8人の野球で、そもそも、9人の野球を想定していないこともあるが、引退間際の選手に頼らねばならないほど、どのチームも選手層が薄かったのである。 今季もヤクルトは本人は守らないと打撃のリズムが取れないと守備出場を主張しているようだが、守備に不安のあるバレンティンをDHに回すと、代わりの外野手は、今浪隆博(31)、比屋根渉(28)、あるいは鵜久森淳志(29)らでDHの恩恵を期待できない。中日も守れないナニータをDHに使うのだろうが、そうなると代わりに守る外野手が、打撃不振の藤井淳志(35)や交流戦に向けて1軍登録した2年目の友永翔太(25)あたりとなり、守りのアドバンテージは持てても、打線強化とはならないだろう。 ただ、巨人、阪神、広島、横浜DeNAの4球団は、少し例年とは趣が違う。 打線不振で10年ぶりとなる泥沼の7連敗を脱出したばかりの巨人は、2軍調整中の阿部慎之助(37)をDHならば使えそうだし、足を痛めて2軍調整中だった広島のルナも、現在中継ぎに使っている外国人投手との外国人枠の兼ね合いもあるが、DHならば復帰に最適だ。エルドレッドとルナが打線に並ぶと、さらなる相乗効果に期待が高まる。 また次から次へと生きのいい若手が出ている「超変革」の金本阪神も、コンディションが心配の福留孝介(39)をDHにおけば、外野に3人の野手を使うことが可能。2軍で掛布2軍監督の指導を受けて再生している横田慎太郎(20)が、再びDHの恩恵で1軍抜擢を受けるかもしれないし、選択肢は多い。三塁の守備が不安定なヘイグをDHに起用した場合、内野手にも使える選手が増える。マテオが戦線離脱、ドリスが緊急昇格してくるが、ブルペンに不安を抱えて勝ちパターンが作れていないだけに、DHを有効活用した超攻撃的野球でそのウイークポイントをカバーして、勢いをつけたいのが本音だろう。 一気に2桁あった借金を返済、借金「1」で交流戦に入る好調の横浜DeNAも、新外国人のエリアン・エレラ内野手(31)がチームに加わるとあって、ウイークポイントだった三塁がこの新外国人で埋まれば、本来代打陣は豊富で、代打成功率が非常に高いチームだけに彼らをDH起用すれば打線に厚みが増す。 12年目を迎えた交流戦。同一リーグの全チームが負ければ、ゲーム差が縮まらないが、その一方で一気にペナントレースを抜け出る可能性があるのも、交流戦の特徴。監督の采配の妙がモロに出るセのDH起用に注目である。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)