栄光と挫折を経験 元ラグビー高校日本代表監督が語るしくじり 「私みたいになってほしくない」
元ラグビー高校日本代表監督で、現在は流通経済大学ラグビー部アドバイザーを務める松井英幸さんがラジオ番組に出演し、これまでの栄光と挫折について語りました。 【関連】女子ラグビー日本一で有終の美 元選手が明かす「本当にやりきった」現役ラストゲームの記憶 ラグビー強豪校として知られる流通経済大学付属柏高校で、30年間にわたって監督を務めた松井さん。創立年度に就任し、全国高校ラグビーフットボール大会(通称:花園)に21年連続23回出場を果たすなどの実績を持ちます。また、高校ラグビー日本代表監督(2010~2012年)も務め、多くの選手を育成。「ワールドカップ2019日本代表メンバーの約7割が高校時代に関わった選手だった」といいます。 2006年ごろ、日本ラグビー界はラグビーワールドカップ2019に向けて「advance to the quarter final(ATQ)プロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトは、日本が開催国として恥じない成績(ベスト8以上)を目標に掲げ、13年という長期的視野で選手育成の仕組みを構築するものでした。 松井さんは同プロジェクトの中心的役割を担い、日本代表が目指すラグビーのスタイルに合わせて、一貫性のある育成システムの確立に尽力しました。 そして、地方からの人材発掘も重要な取り組みのひとつ。全国各地から才能ある選手を見出し、統一されたビジョンのもとで育成することで日本全体のラグビーレベルの底上げを図りました。 結果、日本代表は予選4連勝で初のベスト8入りを果たし、この長期的な取り組みは実を結びました。松井さんは、「13年前に仕組みを作っていこうと関わらせてもらった結果、13年後に彼らが成果を出してくれたというストーリーがある」と、感慨深げに語りました。 そんな成功の裏に、“しくじり”があったと松井さんは振り返ります。ラグビー部監督時代、唯一、花園連続出場が途切れた年がありました。 「関東でチャンピオンになり、高校日本代表が7人ぐらいいて、『これは日本一を獲れる!』という私の欲が出てしまった」と話す松井さん。チームへの過度な期待から練習をさせすぎ、不満を持つ人やケガ人が続出。チームの調子を崩し、花園連続出場の記録が断たれてしまったといいます。 「そこから軌道修正を図った。大きな事件だった」(松井さん) 松井さんはこの経験を自身への戒めとして受け止め、その後、21年連続出場の実績を残しました。しかし2015年、体罰がきっかけで監督を辞任。 松井さんは、自身が受けてきた「愛のムチ」的指導を良しとし、同様の方法で指導を行っていました。しかし、時代の変化とともにその指導方法が「体罰」として捉えられるようになり、最終的には訴えられる事態に発展してしまいました。 監督辞任後、松井さんは書籍『パワハラで人生をしくじった元名監督に学ぶ 変わる勇気』(アチーブメント出版)を執筆。自身の経験を共有することで、同様の過ちを犯す指導者が出ないことを願い、「赤裸々にすべてを語った」といいます。 松井さんは、「指導者の多くが持つ情熱や思いやりが、時に不適切な形で表現してしまうこともある。でもみんな、愛情はある。だからこそ私みたいになってほしくない」と、現在の心境を明かしました。 ※ラジオ関西『アスカツ!』より
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