職場だけでなくスポーツ界でも"パワハラ"?部活動にも潜む危険性とは...INAC神戸越智氏が語る、パワハラを起こさない3つのポイント
明るく楽しく練習に取り組む京都精華学園高校女子サッカー部。全国3位という躍進の原動力となったのは、「サッカーを好きになり、うまくなりたいという気持ちを引き出す」指導である。2021年度まで同校を率い、現在はINAC神戸レオネッサでアカデミー統括部長を務める越智健一郎が語る「サッカーとメンタル」。今回は、近年、メディアを中心に取り上げられることが多くなったハラスメントについて語る。 ※本記事はサッカー指導者向け専門誌『サッカークリニック』2024年11月号から転載 【写真】越智氏の真剣なまなざしは、練習やプレーはもちろん選手一人ひとりの性格や個性まで理解しようとしているのがうかがえる(Photo:INAC神戸レオネッサ) 取材・構成/鈴木智之 |お互いの思いは違うものと認識する 今回は、スポーツ界で起こりがちな「ハラスメント」について話していきます。 昨今、指導者のパワハラがメディアで大々的に報道されるようになりました。スポーツ現場における認識をアップデートしなければいけない時代になったのです。 パワハラは、立場が上の指導者(大人)が、選手(子供)に対し、過剰な言葉を使って指導したり、ときには暴力を振るったりといった形で問題化します。パワハラが起こる原因の1つは、お互いの立場や思いが違うこと。目線や考え方が違うと、衝突しやすくなります。 大切なのは、誤解や行き違いを未然に防ぐことです。中には、悪意がないのに不当に批判されたり、解任されたりする指導者がいます。立場が弱い側である選手の「言った者勝ち」になってしまうのは良くありません。選手、保護者、指導者、学校側の4者で話し合う場を早い段階で持ち、お互いの前提条件をすり合わせることが重要なのです。 指導者としては、自分の立場を守るためにも、選手や保護者とのコミュニケーションを欠かさないことが大切です。これは、現代の指導者に不可欠な要素かもしれません。前提条件をしっかり共有しておけば、「運が悪かった」で済まされるような事態を防げるはずです。 例えば、選手が撮影した動画が出回ってしまったとしても、事前に約束事を決めておけば、味方(理解者)が現れることでしょう。ただし、「隠せ」や「証拠を出せ」といった高圧的な態度は逆効果です。第三者を交えて、より良く過ごすためのルールづくりをするのが良いでしょう。 お互いの思いは違うものと認識し、尊重し合うことが大切です。感情的にならないように心がけ、約束事を早い段階で決めておくことが肝心なのです。