インフルエンサーが生み出す新たなファッション、「本当に作りたい服」をSNSで実現 デザイン類似で「炎上」リスク、ファッションローの知識も必要に
ファッションの新たなトレンドが交流サイト(SNS)から生まれている。その主役は「本当に作りたい服」にこだわり、自身のブランドを立ち上げたインフルエンサーたちだ。世の中にはファストファッションの企業が手がける「安くて売れる服」があふれているが、20世紀を代表する女性デザイナー、ココ・シャネルのように、デザイナー個人が脚光を浴びる時代に回帰する可能性があるかもしれない。 インフルエンサーが手がけるブランドは、その世界観が好きなフォロワーが購入することで、独自の経済圏を形成しやすい。だが一方で、インフルエンサーが手がける服のデザインが他者のデザインに似ているとしてSNS上で「炎上」する事例も相次ぐ。(共同通信=小林まりえ) ▽大手企業とのコラボで自身の役割に葛藤 2023年9月末時点で22万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーのAyaさん(46)は専業主婦だった10年ほど前に、友人とインスタグラムを始めた。美容アイテムや服のコーディネートを紹介していたところ、2016年にアパレル大手企業から商品のコラボレーション企画を持ちかけられ、初めて服作りに携わった。 だが作業を共にするうちに、自分の作りたい服のイメージとメーカー側が売りたい服のイメージにずれが生じた。Ayaさんは「メーカー側はブランドの認知度向上が目的で、(商品自体を良くするための)自分のスパイスは必要ないのでは」と葛藤した。
そんな中で知ったのが老舗の縫製会社のテラオエフ(兵庫県尼崎市)だった。「作りたいものを作れる」と確信し、2019年8月に「un number」のブランドを立ち上げた。年齢にとらわれずにファッションを楽しめるように、という願いを込めた。Ayaさんのインスタグラムでブランドのネットショップのサイトを紹介し、写真や動画を参照しながら購入できる仕組みだ。 un numberの商品開発は、Ayaさんがざっくりと新作の絵を描き、テラオエフのデザイナー森住恵美子さん(56)が服の型に起こす。型や生地、編み方を記した仕様書を海外の協力工場に送り、出来上がったサンプルを確認して、再度手直ししながら完成を目指すという流れだ。 ▽「渾身の1着」ワンピースがヒット作に 2023年9月に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた服飾素材の展示会で、Ayaさんと森住さんが新作のサンプルとにらめっこしていた。「ベルトに裏地が付いているとしわが目立つのでなくそう」「あと数センチ切ったらバランスがいいね」。Ayaさんのひらめきを、森住さんの技術的な知識で服の型に落とし込んでいく。 1回のサンプルでイメージ通りのものが出来上がるときもあれば、3~4回やりとりすることもある。Ayaさんは「商品は店舗で実際に手に取れるわけではない。『これ、かわいいでしょう』という私の気持ちが写真や動画に乗らないと、お客さまに伝わらない」と妥協はしない。