日本銀行は追加利上げを来年1月に先送り:多角的レビューは非伝統的金融政策の効果と副作用の両論併記
■追加利上げは現時点では1月の見通し 日本銀行は、来年1月23・24日の金融政策決定会合で0.25%の追加利上げを実施すると見ておきたい。来年3月あるいはそれ以降まで日本銀行は利上げを先送りするとの見方も出ているが、その場合には、円安進行を許してしまう。 本日の総裁記者会見でも、植田総裁は早期の利上げの可能性を示唆するのではないか。そうしなければ、日本銀行の利上げ先送り観測で進んだ円安傾向がさらに加速してしまう可能性があるからだ。 以上の12月に追加利上げを見送った3つ理由のうち、もはや1月の追加利上げの制約とならないのは第3の理由だ。第1の理由については、1月20日の大統領就任日に、トランプ次期米大統領はいくつかの大統領令を打ち出すとみられるが、それでも追加関税策を中心とするトランプ次期政権の経済政策全体を見極めるまでには、なお相応の時間がかかる。 しかし、見極めが終わるまで日本銀行が追加利上げを実施しないというのは現実的ではないだろう。とりあえず、大統領就任直後の経済政策を踏まえて、1月に追加利上げの是非を検討することが予想される。 また、円安のリスクに配慮すれば、国民民主党の意見を取り入れて、3月の春闘の結果が明らかになる2025年3月18・19日の金融政策決定会合まで、追加利上げを見送り続ける可能性は小さいだろう。 ただし、国民民主党が来年度予算の成立に協力しないことで、来年度予算の成立が遅れ、経済への影響についての不安が大きく広がる場合には、日本銀行が来年3月あるいはそれ以上追加利上げを先送りする可能性がないわけではない。しかしその可能性は低いと現時点では考えておきたい。 ■日本銀行は概ね一定間隔で追加利上げを実施 日本銀行は現在の政策金利は十分に低いと考えており、そのため、経済・物価、金融市場、政治環境に大きな変化がない限り、つまりオントラックである限りは、比較的一定の間隔で政策金利を引き上げて行く、というのが現時点での金融政策の基本姿勢だろう。 日本銀行が、今年3月にマイナス金利政策を解除した後、7月に政策金利引き上げを実施したことを踏まえると、来年1月に追加利上げが実施されれば、従来の利上げのペースは概ね維持されていると言えるだろう。 現状では、政策金利は十分に低く、経済に悪影響を与えることがないとの自信を日本銀行は持っており、それゆえ粛々と利上げを進めてきたと考えられる。 しかし政策金利が上昇していき、経済に対して中立的な水準に近づいたと考えれば、今度は経済指標などをより慎重に見極めて、経済・物価に悪影響が及ばないように配慮し始めるはずだ。政策金利の中立水準は明確には分からないことから、手探りの政策姿勢となるのである。 ただしそれが始まる時期は、政策金利を0.25%から0.5%に引き上げる次の利上げではなく、0.75%に引き上げる時ではないか。日本銀行が来年1月に追加利上げを行う場合、その次の利上げまでの間隔は長くなり、0.75%への利上げは来年9月の会合になると見ておきたい。 筆者は政策金利の中立水準は1%弱であり、政策金利の引き上げは0.75%までとメインシナリオでは想定しているが、1.0%までの利上げの可能性まではあり得ると考えている。その場合、1%への利上げは2026年6月になると見ておきたい。 ただし、トランプ次期政権の追加関税、移民規制、行財政改革が米国経済の減速を促し、FRBの利下げ観測が強まり、円高が急速に進むような局面となれば、日本銀行は追加利上げ策を一時停止するだろう。その停止期間が1年以上に及ぶことも考えられるところだ。