ミッツ・マングローブ、一目惚れした美少年を追いかけて─ドイツ旅の思い出を明かす
ソーホーで人生初の“モテ期”を満喫
ミッツは慶應大学を卒業後、イギリスのウエストミンスター大学で商業音楽全般を学んだ経歴を持つ。 ミッツ:いわゆるクラシック以外の、ポップス、ロック、ジャズ、ヒップホップなどの実技とビジネス、法律、パフォーマンス、スタジオワーク全般を教えてくれるコースを見つけて、そこに行きたいと思いました。 葉加瀬:歌や楽器を演奏するような実演よりは、もっとロジカルなものですか? ミッツ:入試はエッセイとオーディションで、自分が作った曲をピアノで弾き語りしましたね。それで受かって2年ちょっと行って、3年生は卒論と卒業制作だけなんですよ。向こうでもデモテープを作っていろいろスタジオやレーベルに持って行ったりしたんですけど、もちろん無理で。それで一度日本で頑張ろうって感じで3年生の途中で帰ってきちゃいました。 葉加瀬:なるほど。ウエストミンスターに通っていたときに、ソーホーにけっこう通っていたそうですね? ミッツ:はい。親元を離れて自由の身なわけじゃないですか。ある程度、自我も対外的にも相互理解が得られているので、「自分はこういう人です」とカミングアウトしているわけです。まあ毎晩ソーホーで飲んでいましたね。で、クラブに行って男を引っかけ、引っかけられ、私の唯一のモテ期です。1999年の夏。リッキー・マーティンが流行っていました。 葉加瀬:時代がわかるなあ。 ミッツ:ノースリーブのTシャツを着ていくんですよ。タバコを吸おうと思ってタバコを持つと、即座に4人ぐらいが火を点けてくれるっていう……(笑)。 葉加瀬:話を聞いていると、ロンドンはミッツの人生観のベースになっている感じがあるね。 ミッツ:めちゃくちゃありますね。思春期の頃の音楽や、20代前半のいわゆる性の解放もロンドンでしたから。その2本の柱で今も生きているって感じです。
ドイツで経験した“執念の1週間”を振り返る
ミッツは忘れられない思い出として、1999年の夏にソーホーのゲイクラブで出会った美少年とのエピソードを語った。 ミッツ:ロンドンのソーホーのゲイクラブで、めちゃくちゃ美しい金髪の美少年と出会ったんですよ。 葉加瀬:ほう。 ミッツ:その子は旅行でロンドンに、夏休みで来ていたんです。どこから来ていたかというと、ドイツのミュンヘンです。私、その子を追っかけてミュンヘンに行ったんですよ(笑)。 葉加瀬:年齢は同じぐらいだったの? ミッツ:私が23歳、相手が18、19歳ぐらいだった気がする。 葉加瀬:かわいかった? ミッツ:もう、天使のような。名前とミュンヘンから来たっていう情報しか知らなかったんですけど、その子には年上のパパがいたんですよ。そのパパに見つかってしまい、引き離された、と私は思っているんです。だから悲劇的な別れをしたので、「ミュンヘンに行って彼を探し出してあのオヤジから救い出さなきゃいけない」と。 葉加瀬:まるで映画じゃん! ミッツ:「1週間で帰ってきなさい」と周りの大人たちに言われていたので、区切りを設けてとりあえずミュンヘンに行きました。ミュンヘンって小さい街なんですけど100万人都市なわけです。だけど、ゲイタウンとなると限られてくるので、そこのエリアのあらゆる店に毎晩行きました。ミュンヘン中の若いゲイの子に「こういう子を知りませんか?」と似顔絵を見せて。でも「なんだこのおかしい日本人は」みたいな反応ですよ(笑)。 葉加瀬:それからどうしたの? ミッツ:結局、会えませんでした。会えるわけがないんですけどね。だけど、その1週間でしこたま出会いはありましたね(笑)。 葉加瀬:行ってよかったね。 ミッツ:ミュンヘンの彼の特徴が襟足だったんですよ。本当にきれいな金髪で、襟足がちょっと長かったんです。東ヨーロッパの感じの襟足ってわかります? 葉加瀬:わかります。 ミッツ:ロンドンではあまりいない襟足でした。この襟足だったら後ろ姿でも見つけられると思ったんですけど、ミュンヘンに着いたら全員その襟足だったんですよ。「しまった!」って思いました(笑)。 葉加瀬:あはは(笑)。でもさ、会えなくてもよかったんだよ。そのときにバッと行動できる気持ちが大切だよね。 ミッツ:あの1週間の執念は忘れられない。映画にしたら楽しそうですよね。 葉加瀬:本当だよね。すごく素敵な話だよな。 葉加瀬太郎がお届けする『ANA WORLD AIR CURRENT』は、J-WAVEで毎週土曜19:00-20:00オンエア。