「え、君も経験者?」友達づくりから始めてもらったラグビー部の新歓、コロナ禍が明けて起きた変化
団体戦パワー
振り返れば、剣道人生でも水泳人生でも不思議な現象が起きていた。 両方とも基本は個人競技。で、個人戦では勝てないのだけれど、団体戦になると、不思議と体内にパワーがみなぎってくる。「僕がダメでも、先輩がカバーしてくれる。仲間のためにも、僕が勝たなきゃ。不思議と、そんな気持ちになって、思いっきり戦えたり泳げたりできたんです」 だから、大学に進んだら、チームスポーツにチャレンジしてみたい。そんな思いが日に日に膨らんだ。 その思いは、高3の体育祭で決定的になる。 海老名高の体育祭の一大イベント、ダンス大会。ダンス素人なのに、120人ものチームのリーダーに指名された。ダンスに詳しい女子に教えを請いながら、みんなでああだこうだと試行錯誤して、ゼロからオリジナルダンスを創り上げた。テーマは、なぜか、「昭和浪漫」。荻野目洋子さんの「ダンシング・ヒーロー」、少年隊の「仮面舞踏会」。ノリノリの昭和ポップスをつなぎ合わせて、本番でノリノリに踊りきった時、心の底から感じた。 みんなで一つになって、一つのゴールをめざす。みんなで一つになって、何かを創り上げる。それって、素晴らしいことなのだと。 そんな高揚感に浸っていると、たまたま、1枚の写真がSNSから目に飛び込んでいた。暑苦しい男たちが、みんなで、熱く、一つのボールを奪って、前に運ぶ、ラグビーの写真だった。「これだ!」。ラグビーのラの字も知らなかったけれど、直感で決めた。 いざ、始めたラグビー。熱くてキツいだけじゃなくて、難しかった。「考えて考えて考えなきゃ、できないスポーツなんだって実感する日々」。最初はバックスに配された。コーチの藤森啓介(38)に口酸っぱく言われたのは、「次の次の、その次の展開まで読まなければ、有効なプレーはできないんだよ」。初めて触れた楕円(だえん)球のパスやキックに四苦八苦しながら、脳内もフル回転させなければならない。頭も体も、こんがらかった。 上級生になった今年、フォワード(FW)に転向した。ポジションはロック。スクラムの真ん中で、ラインアウトのジャンパーとして、体を張る役割だ。控えに甘んじた昨年までとは打って変わって、主力の働きを求められそう。「バックスより、考えなきゃならないことは絞られている。いまの自分に向いている気がします。まだ、わからないことばかりだけれど」