山里の古刹、紅葉のグラデーション 錦を広げた「床もみじ」鮮やか、季節感じて 兵庫・福崎町 応聖寺
兵庫県福崎町の天台宗古刹・応聖寺(おうしょうじ)で、紅葉の見ごろを迎えた。12月10日ごろまで楽しむことができる。 【画像】兵庫・福崎町 応聖寺の「床もみじ」 応聖寺には1000種以上の植物が育つ。四季折々の花々を見てほしいという思いから、出来るだけ手を入れず自然な姿を残している。 春には桜、秋にはシオン(紫菀=十五夜草)、ホトトギス、タカノハ(鷹の羽)、ススキ、ムラサキシキブ、コムラサキ、さらに11月に秋が深まれば、ツワブキ(艶蕗)、カイノキ(楷樹)の紅葉。 そして、12月初旬には低木のセンリョウ・マンリョウが色づき、しだいに全山がモミジに包まれる。境内にはイロハモミジや、ハウチワカエデ(羽団扇楓)、オオイタヤメイゲツ(大板屋明月)などがあり、朱色や黄色の鮮やかさが錦を広げたような景色になる。 さらに、色づく前の薄緑の木々が紅葉の出番を待っており、グラデーションを楽しむことができる。 姫路市の北隣にある福崎町。霜が降り、寒暖差も大きいため、モミジの色づきも良いとされる。 応聖寺の桑谷祐顕住職によると、モミジは水を好むため、ここ数年の夏の気温上昇、少雨は葉に影響が出やすく、葉先が落ちてしまうこともあったが、11月の終わりから徐々に色づいたという。 本堂東側の書院では、「床もみじ」のような反射した紅葉を撮影することができ、絶好のフォトスポットとなっている。 長野県の60代の男性は、「少し遅めの紅葉もいい。確かに気候変動の影響があるのかも知れないが、私たちはこうして“四季”を感じる。紅葉を見ると年の暮れを実感する。新しい年は争いのない世界に」と話した。 インスタグラムで応聖寺のことを知った神戸市東灘区の30代の女性は、アメリカ・ロサンゼルスに住む妹と訪れた。「山里の静かな空間で紅葉を愛でると、時間を忘れる。季節の変わり目が少しずつずれて、秋を感じることができなかっただけに、12月に紅葉とめぐり会えて嬉しい」と微笑んだ。 応聖寺の茶室「不動庵」では茶会も催された。 茶室には昨年、学問の神として知られる菅原道真の神号『南無天満自在大天神』と書かれた掛軸がお目見えした。 江戸時代前期のものとみられ、後陽成天皇の第六皇子で、第171、174、178世天台座主・堯然法親王(ぎょうねん・ほっしんのう)の筆とされる。應聖寺の所蔵品として大事に保管されていた。 堯然法親王は、京都の三十三間堂を管理する京都五箇室門跡のひとつ、妙法院で住職も務めた。 菅原道真を祀る北野天満宮は、明治維新まで五箇室門跡の曼殊院の住職が別当(管理・監督する役目)をつかさどっていた。 応聖寺にはこの時代、五箇室門跡の教育係だった僧侶がいたとの言い伝えもあるという。 桑谷住職は、「播磨と京の都を“学問”という糸で結ぶために往来し、学びの重要性を伝えていたのではないか」と推察している。 ◆妙見山応聖寺(みょうけんざん・おうしょうじ)兵庫県神崎郡福崎町高岡にある天台宗の寺院。飛鳥時代の白雉年間、約1300年前に天竺の高僧・法道仙人によって開基されたと伝えられている。鎌倉時代、播磨国は有力御家人の梶原景時の所領を経て小山氏の領地となり、応聖寺は代々播磨国守護職の祈願所として発展。関西花の寺二十五霊場八番、播州薬師霊場第十三番札所。「名勝応聖寺庭園」は兵庫県指定文化財。
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