神木隆之介”鉄平”の晩年が描かれなかった理由とは? ”朝子”の人生に涙と希望を抱いたワケ。『海に眠るダイヤモンド』考察
神木隆之介主演の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)が感動の結末迎えた。本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語だ。今回は、最終話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】クライマックスに号泣…実力派キャストの貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『海に眠るダイヤモンド』劇中カット一覧
序盤の印象を大きく覆したラスト
なぜ涙が止まらないんだろう-。 “ヒューマンラブエンターテインメント”を謳っていた日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)。いづみ(宮本信子)の正体や、鉄平(神木隆之介)とそっくりな玲央(神木隆之介)の血縁関係、そして現代では、鉄平はどこにいるのかなど、幾重にも仕掛けが張り巡らされ、毎週ワクワクさせられた。 だが、最終回を見終えた今、本作の感想は、序盤で抱いたものとは全く異なるところにある。 1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島が舞台となった本作。その触れ込みから、日曜劇場らしい壮大なストーリーになるのだと予感していた。しかし、いざ始まってみると、端島での火事や台風、会社と鉱員による戦いといった“内輪”の事象が押し出されている。 端島に当時いた人たちにとってはきっと忘れられない記憶の数々なのだろう。しかし、部外者にとっては、歴史の教科書を見ても知ることができないかもしれない小さな出来事だ。 もちろん、それに肩透かしを食らって文句を言いたいわけではない。 主役級ぞろいの出演者の確かな演技力によって、ひとつひとつは小さなことに見える事件を、私たちはまるで当事者であるかのように体感した。「一体この先どうなってしまうのだろう」そう思った回数は一度や二度ではない。 22日の放送を終えた今、あれらの出来事を「小さな」などと思う人はいないはずだ。
ドラマでは描かれなかった晩年の鉄平
最終話で明らかになったのは、鉄平がなぜ朝子(杉咲花)のもとから去ったのかということ。 鉄平と約束したあの夜を境に、2人は二度と会うことはなかった。鉄平が現れなかったのは、リナ(池田エライザ)の息子・誠がヤクザに誘拐される事件に巻き込まれたからだ。 そのヤクザはかつて進平(斎藤工)が殺した小鉄こと門野鉄(若林時英)の兄(三浦誠己)だった。鉄平は進平の罪をかぶり、リナたちを連れて逃亡することを選んだ。 その後、鉄平は一人で全国を逃げ回る。逃亡中、朝子に手紙を送ろうとしては、愛する人の危険を考えて破り捨てる。端島で外勤として誠実に人と向き合い、働いてきたはずの鉄平がなぜこんな目に...誰も予想していなかった真相を知って胸が苦しくなってしまう。 だからこそ、鉄平の最期を知って、心の底から安堵した。晩年、長崎の野母崎で過ごしていた彼は名前も顔も隠すことなく過ごしていたという。 追手を振り切り最後に自由となった鉄平は海岸線に見える端島を前にどんな表情をしていたのか。ドラマでは晩年の彼の姿は描かれなかったが、家の庭には一面のコスモス畑が広がり、きっと温かな表情で朝子たちの幸せを願っていたのではないだろうか。そんな姿を想像するだけで目頭はじわりと熱くなってしまう。