世界で1年間に犠牲になる子どもの数より多くの子どもが殺されたガザ侵攻…全人口約220万人のガザ市民を虐殺する以外にイスラエルは止まれないのか
シファ病院への攻撃は本当に正当性があるのか?
三牧 イスラエルが主張する、不確かな情報とそれに基づく攻撃にアメリカが全幅の支持を与える。この構図が繰り返されたのが、ガザ最大の病院、シファ病院への攻撃でした。イスラエル軍は「地下にハマスの司令部が存在している」と断定し、病院の封鎖と攻撃を続け、多くの医療従事者や患者、新生児を死に追いやりました。 しかし、現在に至るまでイスラエル軍が提示してきたのは、複数のカラシニコフ・ライフル、ガザ地区ではありふれているトンネルの入り口くらいで、シファ病院にハマスの司令部が存在することを示す確固たる証拠を提示できていません。 戦時の文民保護について定めたジュネーヴ条約(1949年)は、「病院がその人道的任務から逸脱して敵に有害な行為を行なうために使用された場合」を除き、病院への軍事作戦を禁じています。 同条約は、「傷者若しくは病者たる軍隊の構成員がそれらの文民病院で看護を受けている事実又はそれらの戦闘員から取り上げられたがまだ正当な機関に引き渡されていない小武器及び弾薬の存在は、敵に有害な行為と認めてはならない」とも定めています。 イスラエルのシファ病院への軍事行動が、これらの要件を満たしていないことは明白です。攻撃する前に民間人を避難させる努力もまったく不十分でした。イスラエルはジュネーヴ条約には加入、その追加議定書(1977年)には不加入ですが、これらは慣習法であり、遵守するという立場を打ち出してきました。今回の病院攻撃も、国際法違反ではないと主張しています。 アメリカは一貫して、シファ病院はハマスによって軍事利用されているというイスラエルの主張を支持してきました。国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、「アメリカは病院を空から攻撃することは支持しない」と留保した上で、「ハマスがシファ病院を軍事作戦の拠点として利用している事実を裏づける情報を確保している」と述べました。 しかし、それがどのような情報なのか。本当に、病院を攻撃するという例外的な事態を正当化しうるほどに確かなものか。今に至るまでアメリカ政府も示していません。 写真/Shutterstock
---------- 内藤正典(ないとう まさのり) 1956年東京都生まれ。同志社大学大学院教授。一橋大学名誉教授。中東研究、欧州の移民社会研究。『限界の現代史』『プロパガンダ戦争』(集英社新書)、『トルコ』(岩波新書)他多数。 ----------
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