『ウルトラマン80』は色褪せることない青春 長谷川初範・石田えり・萩原佐代子座談会
時代も国も越えた作品に
◆時代も国も越えた作品に◆ ――撮影後に『80』を見返す機会はありましたか? 長谷川 DVD化されたときに改めて観ました。当時はビデオデッキを持っていなかったし、放映日も撮影が入っていたので、ほとんど観ていなかったんです。観返すと、みんな若いなりにきちっと芝居していたなと思いましたね。DVDやBlu-rayになって残っても恥ずかしくないレベルのことをやっていたなと。ただ気になったのは、自分の顔がソフトクリームみたいにつるんつるんだったこと(笑)。俳優としてスタートしたときに山﨑努さん、若山富三郎さんとご一緒して、「こんな俳優になろう」と思っていたから、なんでウルトラマンに選ばれたのか自分では不思議だったんです。つるつるな当時の顔を見たときに納得しました(笑)。 石田 私はピッタリだと思いましたけどね。 長谷川 今見るとね。当時は学校が荒れている時代だったのに、とても健康的でした。実は僕、10代の頃にアメリカで初代『ウルトラマン』のテレビ放送を観ているんですよ。 石田 なんかカッコいい。 萩原 アメリカでやっていたんですか? 長谷川 はい、英語の吹替で。ただ、それが軍隊みたいな喋り方というか、結構大げさな吹替で、子どもたちからブーイングが出ていたんです。だから『80』では、アメリカの人たちにも好かれる、英語に吹き替えられても素敵に見えるキャラクターを演じたいと、ひそかに考えていました。そうしたらある時、萩原さんも一緒にいたと思うんだけど、富士山のスキー場へ行ったときにアメリカの小学生たちがいっぱい来ていて、彼らからすごい人気だったんです。そのときは「やったな!」と思いました。 石田 私も何度か観返しましたけど、みんながとても若々しくて、それだけでも素敵だなと感じましたね。 長谷川 『80』からすぐ『遠雷』があったでしょ? 石田 そうだね。すぐ後くらいかな。 萩原 私も30周年のときに出たDVDや、ウルトラチャンネル(※円谷プロの公式YouTubeチャンネル)の配信で観ました。当時は何十年も残るとは夢にも思っていなくて、もし時間が戻ったらメイクだけはちゃんとしたいです(笑)。放送ギリギリのラインで出ていましたから。 長谷川 ノーメイクでしたか? 萩原 ほとんどノーメイクです。私はドーランを渡されて、自分でそれを塗っていたんですよ。 長谷川 メイクやってもらえなかったの? 萩原 はい。観返すとドーランが全部潰れちゃっていて、タコみたいでした(笑)。 長谷川 メイクよりも、素で勝負できると思っていたんじゃないかな? だって、当時高校生だよ。 石田 そのままのほうが綺麗だと思ったのかな、メイクさんは。あまりメイクしないほうが若さを強調できるって。 長谷川 そうそう。分厚い化粧をしていたら、それこそ後で笑われてた。 萩原 でも、口紅とマスカラはやらせてほしかったです(苦笑)。 ――最後に皆さんにとって、『ウルトラマン80』はどのような存在ですか? 萩原 私は幼稚園のときからウルトラマンや特撮が大好きで、出演できたことが夢のようでした。3~4年くらい前に、『80』のイベントでブラジルに呼ばれたことがあって。 石田 ブラジルに!? 長谷川 あるんだよ、そういうの。 萩原 たくさんの方がいらっしゃったんですが、何人もの方が涙ながらに「私は『80』を見て盗みをやめました」とか、悪いことをやめたとお話されていたんです。「ありがとう」と言いながら泣いていて。その姿を見たときに、今までいろいろなことがあったけど、『80』は私の人生のギフトだったんだなと心から思いました。 石田 すごいね! 長谷川 警察官になった、って人に会ったこともありました。矢的先生に憧れて勉強して、アメリカの有名な大学に入った、って学生から連絡が来たこともあってビックリした。 石田 私は今になって、ウルトラマンのすごさを改めて感じています。仕事でウルトラマンの話題が出たり、雑誌で特集されたり、45年近く経ってイベントがあったりして。当時はウルトラマンに出ることがこんなにすごいことだなんて、わかっていませんでした。 長谷川 多分、僕らは冷めていたんだと思うんだよね。後からウルトラマンをやっている俳優さんは「ウルトラマンやりたかったんです」って人もいるけど、僕たち二人はそうじゃなかった。縁あって寄らせていただいた感じで(笑)。 石田 そうかもしれない。 長谷川 僕としては、隊員のみんなと戦った記録です。どう芝居をするのか真面目に話したり、現場で現実に押しつぶされたりして。それがこんなに長い間愛されて、後の世代の皆さんに見られているというのは本当に幸運なこと。先ほどもお話した通り、当時の芝居に自信があるし、何世代後で見ても決して引けを取らない、古く感じない作品になっているんじゃないでしょうか。 (C)円谷プロ
佐久間 翔大